≪二節;先人たちの栄光と挫折≫
〔その者は―――地球上にある、総ての・・・
あらゆる史蹟に立ち寄り、先人たちが築き上げ、また滅ぼしてきた記憶を、その身に修めてきました。〕
女:―――ただいま。
ハ:お帰りなさいませ―――艦長。
ところで、いかがでした・・・このたびの巡察は。
女:うん・・・中々いい経験になったよ。
彼らから教えられることも多くあった―――・・・
それよりも、何か変わったことは?
〔顔つきは、今まで以上に聡明になり―――
瑠璃色の眸も・・・憂いを湛えながらも、輝きに満ち溢れて見えました。
先人たちの・・・栄光と挫折―――
彼らの残した痕跡には、そのことを刻み込んでいた・・・
自分では、これからは気をつけよう―――とはしながらも、
思い出されてくる傲岸不遜な者たちの顔・・・
そのことを、この記憶と重ね合わせながら、教訓としていくことを誓うのでした。
そのあとで―――自分のいない間に変わったことがなかったか・・・と、
副官・ハミルトンに訊いてみると―――・・・〕
ハ:・・・実は、スターシア様が―――
女:・・・なんだって?ラゼッタが―――??
〔シャンバラの艦長である女禍の、補佐役である副官のハミルトンから告げられた一言に、
女禍は言葉を失い・・・
代わりとしてこちら側に来ているという者に会うために、足早にそちらに向かうようなのですが・・・
その途中に―――〕
女:―――マグラ・・・どういうことなんだ、ラゼッタがいなくなってしまったなんて。
マ:・・・その様子だと、ハミルトンからそのことだけしか聞かなかったようですね・・・。
まあ―――確かに、あいつはあなたのお気に入りだろうから、心配するのも人一倍だとは判ることですが・・・
女:・・・それは皮肉を云っているのか―――
マ:・・・そう取ってもらっても結構です。
ですが・・・ハミルトンが、他にまだ何かを云おうとはしていませんでしたか。
女:代わりに、君が捕らえたという―――
マ:そう、名を カレン=ヴェスティアリ ―――
国籍は米、所属は同国家の情報部欧州特派員・・・階級は中佐。
そして―――この人物が、あなたのいない間に、幾度となくここに侵入を試みた者なんです。
女:彼女が・・・あの国の―――??!
マ:その情報は初耳でしたか・・・。
あいつを失ったという現実は辛いかもしれませんが、ここは一つ冷静になることです。
そのための巡察だったのでしょう―――
女:・・・ありがとう、マグラ。
私はもう少しで、また同じ過ちを犯すところだったよ―――
マ:・・・では、お会いになりますね―――
女:うん・・・案内を、頼む―――
〔女禍を待ち受けていたのは、同じ組織に所属する、少年のヴァンパイアであるマグラ・・・
そして、ここでマグラは、女禍に注意を促せたのです。
大切にしていた存在を失ってしまった―――そのことで苛立っている女禍を・・・
そのことに気付き、思い止めらせてくれたことに、女禍は感謝の念を贈ったのです。
そして、ここでようやく知ることとなったのです・・・。
ラゼッタの代わりとして居る者が、以前、自分の感情の昂ぶりによって、
滅ぼしてしまった国家の生き残りだ・・・と、云うことを。〕