<第二十三章;更なる教訓>
≪一節;未明の侵入者≫
――Γ8ブロックニ 侵入者アリ 至急警備ノ者ハ 対応ヲ シテクダサイ――
〔突如―――何者かが侵入してきたことを知らせるアラートが鳴り響き、
またそれに対応するために、今回進入してきたと思われる地点に急行をする警備担当者・・・
しかし―――・・・〕
警:くそっ―――また誤報か・・・
警:いや、ここを見てみろ・・・何者かの足跡が―――
警:なんだと? すると―――・・・
警:ああ―――何者かが侵入してきたことには間違いはないようだ。
〔シャクラディア城に侵入してきた者を捉えるために、現場に急行をした警備員・・・
しかし、彼らがその場所についたころには、もうすでに侵入者の痕跡は残されていなかったのでした。
しかも・・・どうやら今回が初めてのようではなく―――〕
ブ:ナニ―――?またか?!
警:はい・・・それに、以前彼女から指摘を受けていた場所が軒並み・・・
ブ:なるほどな・・・判った、下がっていい―――
〔これで何回目となるのだろう―――・・・
ここ数日のうちで、ある者から指摘を受けたこの城の警備の盲点・・・
しかも、ここ最近の侵入の経路は総てそこからであり、でも・・・一つ謎なのが―――
その総ての用件が、“侵入したこと”であり、侵入してそれからなにをしよう―――というものではなかったのです。
けれども、この問題をそのままにしておくわけにもいかず、ブリジットはこの問題点を指摘した者を、自分のオフィスへと呼んだのです。〕
カ:―――どうしたというのかな・・・私を呼ぶとは。
ブ:・・・卿も知ってのように、以前卿から指摘を受けた地点から・・・
カ:侵入を受けた―――というのか・・・全く人騒がせな。
ブ:・・・まさか―――とは思うが・・・
カ:おいおい―――冗談もほどほどにしてくれないか。
どうして私が、自分の友人を裏切る行為をしなければならない謂(いわ)れが・・・?
ブ:ふっ・・・そうだったな―――いや、疑って申し訳ない。
カ:だが・・・疑われても仕方がない―――か・・・
・・・サラ―――至急この城の全容図をモニタリングしてくれないか。
サ:(サラ;ここのオペレーター)
かしこまりました―――(カタカタ〜☆)
カ:(ふぅむ・・・まだ侵入を受けていない経路がいくつかは残っているな―――よし、ここは・・・)
ブリジット―――これから私が指示をする場所に、CCDを設置してくれないか・・・
ブ:監視装置の上に、まだ監視用のカメラを備えようというのか―――?
カ:ああ・・・それも、私のように間諜に携わってきた人間が一番に嫌うアングルに・・・だ―――
ブ:―――ということは?!
カ:ああ・・・おそらくこうも立て続けに侵入をしてくる者は、同一人物―――
しかも、ここの警備全般に携わっていて、警備の盲点など知り尽くしている―――
ブ:・・・まさか―――!
カ:そういうことだ・・・しかし、ここの人間も、おそらくあなたも、そうであってほしくない―――と、願ってはいるが・・・
こうもあからさまでは・・・な―――
〔ブリジットに呼ばれてきたのはカレン―――・・・
ではどうして彼女がブリジットのオフィスに呼ばれたか―――の理由付けに、
ここに来てまだ日も浅いカレンに目星をつける他はなかったのです。
そんなカレンも、自分が疑われるのは仕方がないこととし、その上で自らの身の潔白を示すためにある提案を申し出たのです。
そう・・・永らく間諜の仕事に携わってきた自分―――その自分のみが知る侵入時のノウハウ・・・
それも、侵入する側が一番に嫌う監視カメラのアングルをブリジットたちに教えたのです。
これによって少なくともどれかのカメラには、侵入者の容姿が収まりその正体が暴かれる・・・
しかし―――実を云うと、ここの職員はもとよりブリジットも、件の侵入者の正体は判りきっていたことなのでした。
ただ・・・彼らは、カレンよりそちらの人物のほうが付き合いが長いことから、“そうであってほしくない―――”と、願っていたものだったのです。
それはカレンも同じこと―――自分と入れ違いでいなくなってしまった、シャクラディアの一員・・・
そのことを口にするのは容易(たやす)かった・・・けれども確たる証拠もないままでは、噴飯ものであることを感じ、
自身の知る秘匿中の秘匿を持って、侵入者の正体を暴きにかかったのです。〕