≪二節;洗脳≫
〔そして―――その刻は意外にも早く訪れました。
監視カメラが設置されたその日の晩―――ここの警備体制を嘲笑(あざわら)うかのように、またしても侵入者が現れ、取り逃がしてしまった・・・
でも、今までと違っていたことは、今度はその証拠がはっきりと捉えられており―――
しかして・・・侵入者の正体を見た者達は・・・〕
警:ああっ―――スターシア様!!
ブ:やはりな・・・しかし―――どうして彼女が・・・
カ:実に簡単なことだとは思うが・・・
ブ:―――どういうことだ、カレン・・・
カ:彼女のような優秀な人材は、その存在を失わせるよりも、頭の中を変えてしまえば問題はない。
それに、あの眼はすでにその洗礼を施された者の証し・・・
ブ:おのれ・・・ふざけるな―――! どうしてラゼッタが、私たちと敵対しあわなければならない!
カ:ブリジット・・・彼女と付き合いの長かったあなたが、そうであると認めたくないのは理屈としては判らないではないが・・・
ラゼッタが洗脳を受けた事実は素直に認めるべきだ。
ブ:・・・だまれ―――!!
カ:それとも・・・そうなった人間を前にして、あなたは丸腰でいられるのだろうか―――
私は・・・知っている・・・過去にそういうことがあって、落命した愚か者がいたことを。
ブ:何だと・・・? カレン―――もしや・・・
カ:アレは・・・本当にどうしようも出来ないんだ・・・。
“洗脳”というものはな―――元に戻ったように見えても、必ずどこかで支障をきたせる・・・
その―――過去に洗脳を受けた人間を奪還し、こちら側も相手がかけた洗脳を解くための洗脳を行った・・・
初めのころは元通りに戻ったものと思っていたが、突如としてそいつは狂い始め、やむなく射殺命令が下された。
そいつを撃ったのはこの私であり―――そいつ自身は、私のフィアンセだった人間だ・・・。
ブ:カレン―――・・・
カ:全く―――お粗末な話しだ・・・あんなにも絆が深いものだと思っていたのに、私を目の前にしながら銃口を向けたんだぞ・・・
たった一日やそこらのマインド・コントロールで、あんなにまで人格が変わってしまうなんて―――!!
〔カレンは・・・その場にいた誰よりも、洗脳―――マインド・コントロールの怖さを知っていました。
かつて、敵の手に落ちた自分たちの同僚を奪還する際にも、洗脳された人間・・・その友人が、彼に近づいた―――と、思った瞬間、
友人は彼が隠し持っていた刃物によって落命してしまったのです。
そのすぐあとに、彼の周囲(まわ)りを囲んでいたエージェントたちが、洗脳された人間を取り押さえ―――そして洗脳を解いた・・・
そうとばかり思っていたのに、ある日彼はしばらくぶりに職場に顔を見せたかと思うと、急に人格が変わったかのように銃を乱射―――
その場に居合わせた職員5人を殺害―――15人が重傷・・・21人が負傷したのです。
どうして―――洗脳を解いたはずなのに・・・
そう思いつつも、上層部は早急に彼の射殺を決定―――
そしてその引き金を引いたのは誰あろう・・・その年の秋に彼と結婚する予定であった、カレンだったのです。〕