<第二十四章;奪われた光>
≪一節;療養見舞い≫
〔シャクラディア商会の中枢を揺るがした一大事件も、ようやくにして収まりを見せ・・・
商会の活動も軌道に乗り始めたころ―――
先だって人質になっていた者からの深い嘆息が・・・〕
―――はぁあ〜・・・
ラ:―――ヒマ。 なんだか死ぬほどヒマですわ。
ブ:ま―――まあ・・・あとしばらくだそうだから、辛抱してはどうかな・・・。
ラ:ええ〜―――そうでしょうとも、全く・・・自分の間抜けさにほとほと呆れますわ。
ほら―――こういうことを、こちらではなんと云いましたっけ?
カ:『ミイラ取りがミイラになる―――』・・・じゃなかったかな・・・。
ラ:ああ―――そうそう・・・全くもってそうだわ、剰(あまつさえ)・・・
マ:―――最も慕う人に涕まで流させちゃって。
全く―――アホでバカで、どうしようもないんだもんなぁ〜。
ラ:・・・ちょっと―――マグラ。 それはさすがに云い過ぎなんじゃなくて・・・
マ:だって―――本当のことだろ? 間抜けだ・・・って、自分でも云ってたじゃないか。
ラ:そ・・・それは〜まあ〜云いましたですけど―――それを他人に・・・ましてやあんたになんて云われたくはないわよ!
マ:ふ〜ん―――・・・それじゃ、ドジでノロマなカメ。
ラ:こっ・・・の―――! ねェマグラ・・・あんた―――イッペン 死ンデミル?!
〔ラゼッタは、不本意ながらもこの度虜囚の身となってしまい、その上洗脳を施されたことから、
それをクリーニングするためのリハビリテーションをするため、半ば監禁状態にありました。
そのことはラゼッタ自身も自覚していたため、別段トラブルになるようなことはなかったようなのですが・・・
問題は、女禍たっての願いでブリジットとカレンをリハビリのパートナーに選んだだけではなく、
その場には・・・見てのようにマグラまでいたのです。
しかも、ラゼッタを揶揄(からか)うような言葉の連発に、ラゼッタは我慢の限界に来たか―――
ついに手を出してしまったのです。
ところが―――・・・〕
〜う゛にゅ゛るる―――ぐにょぐにょ゛〜
ラ:びゃぁあ゛〜! ちょ・・・ちょっとなにこれ―――きしょぃい゛〜!
マ:そういう軟粘体は昔から苦手だったものな―――・・・お前は。
ラ:こっ・・・こんにょぉお〜〜―――ひいぃぃ〜く・・・くすぐったぁい〜!
ブ:(何をするかと思えば―――ゲル状の触手・・・って)
カ:(エロゲーかよ、これは・・・)
〔現在四人がいるこの部屋は、禁固・監禁用の懲罰部屋でもあったため、その対象者は自己の持てる能力を制限されていました。
―――にも係わらず、ラゼッタがマグラに対して攻撃を仕掛けようとしたところ、
この部屋の特殊フィールドの作用によって能力を制限されてしまい、あっけなくマグラの術・・・自分が苦手としているモノで捕らわれたため、
それからは大人しくする―――モノと思っていたら・・・〕
ラ:〜んのぉ―――・・・(シュビビ〜☆)
マ:フフン―――なんだい、それ・・・そんな微弱な電流で、ボクをどうにかしようって?
悔しいのは判るけど―――今のお前じゃ能力を制限され・・・
――ぶぇ〜っくしょいっ!――
(ぽろぽろ〜)―――あ、あれ・・・?(ずびずび) な・・・なん゛だが、急゛に゛眼゛と゛鼻゛がしぱしぱ―――
――ぶぇ〜っくしょいっ!!――
ブ:汚いな・・・マグラ―――その辺に菌を撒き散らすなよ?
マ:いや゛・・・ブリジット―――ボクは風邪なん゛か゛・・・(ずび―――ずびび〜・・)
カ:うわっ―――ばっちぃ・・・何だ?鼻水まで垂れているぞ??
ブ:(涕に鼻水??)それ―――って・・・もしかして花粉症??
マ:ほえ゛? でも゛ぞん゛な゛も゛の・・・(チラ)
ラ:―――・・・。(ニヤソ)
マ:ん゛あ゛! な―――なんでごん゛な゛どごに゛、杉科の゛植物・・・
――ぶぁ〜っくしょっ! くしょい―――げふっ!げふっ!――
だ・・・たま゛ら゛ん―――ここは一時退゛散゛だぁ゛〜!
ラ:―――へへっ、ざまぁみさらせ〜だわよ♪
ブ:あの状態で一矢報いるとは―――
カ:中々―――大したもんだ。
ラ:あら―――だって、やられっぱなしだったらナメられるでしょ?
ブ:それは一理あるな―――
カ:でも、ラゼッタは女の子なんだから、もう少しらしくしないと・・・
ラ:あら―――云ってくれるじゃない。
ブ:プッ―――
カ:ププッ―――
――〜あっはは〜――
〔ラゼッタも然(さ)る者―――微弱な電流を流してマグラに対抗したのですが、
実はこの電流はマグラを狙ったのではなく、全く見当違いの方向へ―――・・・
そのことに気を良くしたマグラだったのですが、突然くしゃみを一つ―――
そのあとにもなぜだか涕と鼻水とくしゃみが止まらなかったようで・・・
しかしこの症状は―――そう・・・花粉症。
早い話マグラは、鼻などが利くために、そういったモノに敏感かつ弱かったようなのです。
―――と、いうことは・・・そこには互いの弱点を知り尽くし、有利になるものを仕込ませた上での壮絶な闘争が・・・(笑)
この・・・ラゼッタとマグラの、半ば子供同士の喧嘩のように思えるようなものでも、
後の世には重要な伏線ともなってくるのです。〕