<第二十五章;割れた素姓>
≪一節;女禍の変貌≫
〔この“蒼く美しき天体”である地球を我がモノにせんがために、その組織から放たれた刺客こそ、
この度の不適切な 贈り物 =プレゼント=であったラゼッタだったのです。
しかし―――刺客から放たれた兇悪なる刃は、決して女禍の身には届かず・・・
その身代わりとして、女禍とラゼッタの間に割り込んだブリジットが受けてしまったのです。
それを見たカレンは―――ただ唖然とするしかありませんでした・・・
どうして―――この人たちが自信を持って、マインドコントロールは洗い落としたと云っていたはずなのに・・・
またしても自分の目の前で、仲間の一人が洗脳された者の手によって害されてしまった・・・
あれほど―――アレほど、危険性を説いていたはずなのに・・・どうして―――
その悔しさと、これから自分たちがどうすればいいのかの指示を仰ぐため、シャクラディアの主である女禍のほうを振り向いてみれば、
すでに彼女の自我は失われつつあった―――・・・
そこでカレンは気付くことになるのです、女禍のもう一つの姿――禍神――を・・・
けれどそのとき―――〕
――〜無限天上 最大最勝 無常無下〜――
=ヴォーテックス=
女:ぅ・・・ああっ―――!
〔突如として空間より声が聞こえたかと思うと、女禍の周囲(まわ)りを呪縛結界が張られ、
光とも闇とも思えないモノが女禍を包み込むと、彼女の・・・あの兇相は払い落とされ、元の表情に戻ることができたのです。
しかし―――
今にもこの世界を壊し尽くしてしまいそうな憤怒の表情と、またそれだけの雰囲気を醸していた女禍の穢れを、
それを一瞬のうちに払ったのは―――誰?
すると―――〕
ガ:まったく―――しょうがないことをしてくれたもんだわねぇ〜。
カ:あっ?! あなたは―――・・・?
ガ:おっ! あんたと顔を合わせるのは初めてだねぇ〜 カレン=ヘカテ=ヴェスティアリ殿。
女:あ・・・・ああっ―――わ、私はまた・・・!
ガ:まったく―――危なかったよ、お前はもう少しでこの子を殺してしまうところだったんだ・・・
いいかい―――女禍・・・よくお聞き、お前には私たち二人にはないものがある。
それが現段階では、その顔すら覗かせていないのは、お前がその御し方を知らないからなんだよ。
知人が―――知人によって傷つけられてしまった・・・
ただ、それだけのことで、道を失ってしまうようじゃあ、この先まだまだ辛い目に遭うことになるんだよ。
カ:でも―――ブリジットがラゼッタに傷つけられたのを、『たったそれだけのこと』―――って!!
ガ:・・・悪いけど、『それだけのこと』なんだよ―――カレン。
宇宙の摂理からしてみれば、そんな感情なんていくらでも散在している・・・
今ここで起こらなくてもね、この惑星―――果ては宇宙では、絶えずどこかで繰り広げられている日常茶飯事的なことでもあるんだよ。
そんなことにね・・・いちいち感情的になっていたら、この子は何度あんたたちの故国を滅ぼした 禍神 という存在にならないといけないんだい?
第一、そんなことはね―――これから大きなことをしようとしているこの子にとっては、本当にちっぽけなことなんだよ・・・
ラゼッタやブリジットには、申し訳のないことなんだけどね―――・・・
〔女禍の穢れを払い、無効化してしまった存在こそ、紅い髪をした女禍たちの長姉―――ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャスなのでした。
そう―――ガラティアとジィルガはこの事態をある程度推察しており、自分たちの妹がしていることの邪魔立てをしようとしている連中を、
現場で取り押さえて、きついお灸を据えようとしていたのです。
そんなところへ、女禍の属性がまたもや急激に=混沌=<カオス>に堕ちようとしていたところだったので、
超法的措置で、ラゼッタを操っていた者の処へは次の姉をして処理をしようとしていたのです。〕