≪三節;姉の顕現(チカラ)

 

 

〔それはそうと――― 一番大きい姉は・・・〕

 

 

ガ:それよりも―――今回の最大の功労者を何とかしないとねぇ。

カ:え・・・っ―――ブリジットが・・・ブリジットが助かるというのですか?

 

ガ:当ったり前だろ? 私以外の二人が出来ないことを、私が出来る―――

  だからこそ、私がここにいるのさ。

女:・・・お願い―――姉さん・・・お願いします・・・

 

ガ:ああ、任せときな―――

 

 

〔ガラティアは、何も女禍の“堕天”を抑えるためだけにこの場に現れたわけではありませんでした。

 

そう・・・彼女は―――彼女だけに与えられていたチカラを駆使するべく、この場に現れていた・・・

 

ガラティアの―――ガラティアだけに与えられたチカラ―――・・・

 

その一端を行使し、出血の激しいブリジットの被傷箇所を治し、多量に失われた血の増設・・・

また、血と共に失われていた正気も、次第に回復しつつありました。

 

ところが―――・・・〕

 

 

カ:え・・・? あの―――まだ途中なのに・・・・どうして止めてしまうのです?

女:・・・まさか―――姉さん・・・あなたは・・・

 

 

〔このたびの名誉の負傷は、ほぼ治癒されました・・・

けれど、なぜかしらガラティアは、完全な治癒まではしなかったのです。

そのことをカレンは、ガラティアに問い詰めるようにするのですが―――女禍はどこか思い当たる節があるらしく、

これから一番大きい姉のすることを見守ろうとしていたのです。

 

それではなぜ―――ガラティアがこのときブリジットの傷を完治させなかったか・・・

それこそが―――彼女だけがなしうられるべきチカラだったから・・・

それであるがゆえに―――この場に現れていたのだから・・・

 

 

ブリジットは―――気がつくと・・・自身の左の視界が失われていることに、気がつきました。

けれど―――あのときのように激しい痛みは感じられなかったものの、残った右の視界の周囲(まわ)りを、星のようなものが チラチラ と舞っていた・・・

そんな恍惚にブリジットは、今、自分が身を置いているこの場所は、死んだ人間の行き着く場所―――ヴァルハラではないかと疑ったのです。

 

すると―――・・・〕

 

 

?:・・・気分は―――どうだい・・・

ブ:最悪・・・でもありません―――盟友(とも)の危険を察し、私がその盾となれた・・・それで十分です。

 

?:・・・そうかい―――

ブ:それよりもあなた・・・確か以前にもどこかで―――

 

?:―――・・・。

ブ:・・・まさか―――ガラティア? するとここは―――

 

ガ:フフフ―――おやおや・・・気の早い人だね。

  そうだよ、あんたはまだ死んではいない―――この私が、ここにいる限りは・・・ねぇ。

 

ブ:えっ・・・? でも―――私は・・・

女:違うんだよ―――ブリジット・・・私の姉さんは、=創造=を司っているんだ。

  今までに在るモノを修復しつつ、また新たなる意義や生命を作り出していく―――・・・

  それこそが、ガラティア姉さんだけに許された顕現(チカラ)なんだ。

 

ガ:はいはい―――御託はそれくらいにしといて・・・

  これからすることを始める前に、この子に聴くことがあるんだから―――・・・

 

 

〔坐する自分の眼前に聳え立つ紅い髪の人を、ブリジットはこれまでに幾度となく見かけていました。

だからこそ、その人―――ガラティアのことを知っていたブリジットは、自分がまだ死んでいないことに気付くのです。

 

―――だとしても、失いかけた生命を救うべく発現されたガラティアの顕現(チカラ)を、“神”のそれと一瞬疑ったのですが・・・

側にいた女禍は、ある言葉を添えたのです。

 

――私の姉は、“創造”を司る人――

 

―――と・・・

 

この“創造”とは、新しく物事を創っていく―――に通ずるのですが、ここでは少しばかりその意義が違っていたのです。

それは、今までに存在している、またはあった存在の意義を選定し、残すべきは修復して残し―――

また残されなかったモノに関しても、そのままにしておくというのではなく、残されなかったもの同士を掛け合わせて新たなる物を創造り出していく・・・

それこそが、ガラティアのみに許されていた顕現だったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

>>