≪五節;末路≫
〔それからしばらくすると―――〕
ガ:おや、どうやらそちらも終わったようだねえ〜。
―――で、成果のほうは・・・?
ジ:フッ・・・こちらに―――
ド サ
ゴロゴロ・・・
〔ガラティアの秘蹟が滞りなく終わったころ、まるでタイミングを合わせたかのように、
彼方にてやるべきことを終わらせた者―――
しかし、その者が手に持っていたモノを投げてよこしたのを見ると―――
それは、無惨な姿に変わり果てた、ブラックウィドウは=ディアブロ=の長だったのです。〕
ガ:フ・・・それにしてもよく我慢した―――本当なら、一回こっきり原子の塵にしたくらいじゃ、お前の肚の虫は納まらなかったのだろうに・・・
ジ:早く―――始めてくださらない・・・こんなヤツと、同じ空気を今でも吸っていると思うと・・・
ガ:はいはい―――判ったよ・・・そうそう短気を起こすもんじゃないよ。
さぁ〜て―――と・・・では、お前さんに質問だ。
お前さんの名と、所属している組織・・・と、その首領の名を云いな―――
オ:フフ・・・フ―――あたら私がどう答えるか・・・判っているのだろ・・・
―――わ、私の名は、オーギュスト=カリギュラ=シュタインバッハ・・・ブラックウィドウの=ディアブロ=を統括する者だ。
カ:なんだ―――?こいつ・・・前(さき)の言葉とは裏腹に、何もかも喋り出している・・・
ブ:ガラティア―――あなたのその口の動き・・・
オ:ば―――馬鹿な・・・わ、私の意思とは関係なく・・・
ガ:――――・・・。(ぱくぱくぱく・・)
}―――組織の構成員は、約二万余名・・・すでに世界各国へと散らばせて、一斉蜂起の機会をうかがっている・・・{
オ:それに、ここでは―――未だに 原子核 を保有している団体が数多くあるので、
その団体の指導者や首脳陣を、われらの構成員と挿げ替えさせ、旨く扇動してしまえば・・・
この惑星は一気に死の星と生まれ変わり、われらの住みやすい環境へとなっていくことだろう―――
カ:な・・・なんておぞましいことを―――! 世界各国が保有している核を一斉に発射させる・・・?!
ブ:この惑星を―――生物の住めない環境にしてどうしようというのだ!!
オ:フフッ・・・知れたこと―――ここをわれらの活動拠点とするのだよ・・・
この宙域近辺での活動をしやすくするために、物資を運び・・・他の惑星で虜獲してきた者共を、労働力として調教する・・・
おお―――そう云えば、この惑星の知的生命体もそう悪くはない・・・
現在われらに媚(こ)び諂(へつら)っている者共を繁殖用の種とし、番(つが)わせて子々孫々を残してゆけば、よい人畜となることだろう。
実際―――そういうものを欲している地域は、この宇宙にいくらでも存在しているのだからな・・・
それに―――少量の餌を、死なない程度に与えてやれば、文字通り死ぬ気になって、死ぬまで働いてくれる・・・
そのおかげで常に品薄状態なのでね―――どうしようかと思っていたところなのだが・・・
〔そこには―――頑(かたく)なに口を割ろうとはしない者がいたわけなのですが・・・
なぜかしらガラティアが口パクの状態にしていたとき、その者の意思とは関係なく、彼が知りうるべき総てのことが紡がれ始めたのです。
それこそは―――“言霊憑依”・・・
しかしそこには、畏るべきウィドウのある計画の全容が暴かれだしていたのです。
その畏るべき計画とは―――・・・
まづ最初に、世界各国に散らばっている核を、一斉に作動させるべく、各国の指導者・首脳陣をウィドウの幹部たちと総入れ替えさせ、
然るべき刻を持って一斉に作動させ、自分たちの住みよい環境へと一転させる・・・
そして次には、現段階においてウィドウに接触し、またはその走狗に成り果ててしまった連中を養殖・飼育させ、
安価な労働力としての 人畜 を作り上げようとしていたのです。
その事実をこの度のことで知るにいたり、黙っていられなかった者達は―――〕
カ:―――なんだと? それでは・・・公式・非公式で記録されている未確認飛行物体に、誘拐事件は・・・
オ:無論―――人畜に相当すべきかどうかの選定を行っているのだよ、お嬢さん・・・
ブ:・・・下衆が―――
オ:だが―――それこそが現実なのだ。
フッ―――フフフ・・・それに、そのことはわれらの組織だけに限ったことではない。
そこにいるフロンティアの連中も―――
ジ:お前たちのような外道と、女禍ちゃんがやろうとしていることを一緒にするな!!
この子はね・・・お前たちみたいに、自らの手を汚さずに何かをしようと出来る存在じゃない・・・
自らが傷つき―――また犠牲させることで、何度も何度もへこたれずに挑戦しようとしている・・・
そんな―――この子の苦労を何一つ判りもしないようなヤツが、したり顔をして謳ってるんじゃないのよ!!
女:姉さん―――・・・でも、私はこれまでにそんなことを、これっぽっちも・・・
ジ:当たり前よ―――だってこの子の持てる顕現(チカラ)は、お姉さまの<創造>私の<破壊>・・・
それに比べられようもない可能性を有しているんですもの・・・
ガ:ジル―――
ジ:判っているわ・・・お姉さま―――けれどこれだけは云わせて。
私は―――・・・
〔ここ近年話題となっていたUFOなどの誘拐事件は、よく各国での“特番”などで取り上げられ、賛否両論としてありました。
しかし―――“大山鳴動して・・・”の喩え通り、収拾のつきにくいものでもあったのです。
けれども・・・この一見して眉唾な事件は、その計画実行者の口から語られるに及び、一気に信憑性を増してきたのです。
ところが・・・このオーギュストなる者は、この場にいるフロンティアも、ウィドウと同様のことをやってきていると云ったのですが、
そこがジィルガの気の障るところとなり、一気にまくし立てあげたのです。
その様相を見るにつけ―――あることを危惧したガラティアは、軽く注意を促したところ・・・
ジィルガもそこのところは良く心得ているらしく、けれども胸に収めていることはこの際発言したのです。〕