<第二十六章;愛しき者たちへ>
≪一節;立て直しの計画≫
〔例の―――シャンバラ商会侵入未遂事件より、しばらくが経ったころ・・・
やはりそれでも、彼らから受けた傷は癒えるはずもなく、悄然としたシャンバラ商会の主の姿が―――
それをみて、取り巻きのカレンとブリジットは・・・〕
ブ:アレから日にちが経ったが・・・持ち直す気配は見られないな―――
カ:仕方がない―――私たちだって、落ち込んでしまえば持ち直すのに時間がかかるものだろう。
ブ:―――まあ、そうではあるが・・・な、それより、ラゼッタのほうは・・・
カ:似たようなものだよ―――考えても見ろ、日ごろ敬愛している人に、洗脳されていたとはいえ、襲い掛かってしまったのだぞ・・・
それに―――“死”による制裁ではなく、むしろ生き永らえる事で罪過を払わせようとするとは・・・
今までにここの主軸だった二人がこうでは―――ここはもう死んだも同然だ・・・
こんなときに、私たちはどう動いたら―――・・・
ブ:・・・こんなときだからこそ、私たち二人が盟友に成り代わり、彼女の偉業を引き継がなければならない・・・
カ:“偉業”―――か・・・まるで死んでしまったようなモノの云い方をするものだな・・・
ブ:・・・云い方がまづかったようだ―――訂正しよう・・・
だが、あの二人が立ち直るまで、ここを切り盛りさせる臨時的な管理官は必要なことだとは思うが―――
カ:―――それをあんたがやろう・・・と、云うのか。
ブ:いや・・・私はそこまでおこがましくはない。
お互いが足りない部分は、お互いが補い合えばいい、そういうことだ―――・・・
頼むぞ、盟友よ―――
カ:フッ・・・いきなり重き荷を背負わされようとはな―――せいぜい頑張らなくては・・・
それより―――運営のほうは任せるとして・・・警備・技術方面は私の担当か・・・
これは勉強をし直さなくてはならないかな。
ブ:フフ・・・おや―――?確かスパイは勤勉家の集まりだから、さして苦にはならないとは思ったが・・・
それに―――盟友も、口癖のように云っていたではないか・・・
――三日会わざれば刮目に値す――
カ:・・・だったな―――
それでは、せいぜい自己破産させないように運用してくれたまえ。
ブ:ああ―――もちろんだとも・・・
〔かつて―――シャンバラ商会の主軸だった二人が萎(しお)れてしまってからというものは、
商会の業績は悪くなる一方・・・早、倒産さえ危ういと、投資家たちの間では囁かれだしてはいたのですが、
前代表から業務を引き継いだ者の手によりすぐに持ち直すと、以前にも増してその商会の業績は上昇し、
株式の上場においても世界屈指の売り上げを誇るまでになったのです。
しかし―――その並みならぬ経営手腕こそ、かつて『鉄の女二世』とまで呼ばれた者の成せる業なのでした。〕