<四節;他の、誰でもない、誰か・・・>
ブ:ふぅ~―――すみません、化粧室が思っていたよりも込んでいまして。
女:ああ、ブリジット―――丁度良いところに戻ってきた。
紹介しよう、こちらは―――・・・
ブ:・・・あなたは―――ソーリアム代表の・・・
女:―――えっ? 知っているの?ブリジット・・・
謎:あらあなた―――・・・ウフフ・・・そうですか、以前わたくし共からの融資を断ったことのある、シャンバラ商会の代表取締役と理事の方・・・
遠い回り道をしたようですけれど、どうやらわたくしたちはこうなる運命(さだめ)・・・だったようですわね。
女:えっ? あなた―――・・・
ヱ:・・・ヱニグマ―――そう呼んで差し支えございません。
では、今日のこの日、互いの倖を祝して・・・
ブ:名誉顧問―――その杯をお受けしてはいけません。
あれからこちらのほうで改めてあなた方の企業の実態を洗い直してみましたが、依然として不透明なまま・・・
表面上では良く見せても、その裏側では―――・・・
ヱ:―――おだまりなさい。
今、あなたの意見を求めてはいません。
それにこれは単なる乾杯・・・それを受けるのはお前などではなくこちらの方―――
ブ:うっ・・・く―――
女:・・・これは失礼をしたようですね。
それにそちらの名を明かしてもらえたのに、まだ私の名は明かしてはいない・・・
私は―――女禍=ユーピテル=アルダーナリシュヴアアラ・・・今後ともよろしく、“誰でもない方”。
ヱ:ウフフフ・・・いえ、こちらこそ―――<フロンティア>の理事のお一人・・・
〔その最初は、お互いの素姓が明らかにされないままにいたから、どこも疑うことなく両者とも面と向かって談笑をしていたものでした。
けれども、そういった関係になれなかったのは、以前、女禍の立ち上げているシャンバラ商会に融資の話を持ちかけてきたこの女性・・・ヱニグマなる者と、
あの当時にはブリジットが商会の代理として対面をしていたこともあり、同時にヱニグマを怪しんだことから、その話も破談になったのです。
ですが―――・・・
それがこういう象(かたち)で出会うこととなり、しかもその女性―――ヱニグマの本性の顕れたものの話し方により、
これからは“善い”関係ではない―――いや、むしろ逆の関係で親密になるであろうことは、容易に知れてくることだったのです。〕
To be continued・・・・