<第二十八章;突き抜ける衝撃>
≪一節;“仕方のない”出来事≫
〔初対面のときは、どこかセレブレティーな感じがしたその女性こそ、
かつてガラティアがそう捉え、次姉に要注意を促しておいた存在なのでした。
しかし、その情報はブリジットや女禍までには回ってはおらず、そこで望むべくのない対面を果たしてしまったのです。
それに・・・愛する妹と、そんな存在とを会わせないように、水際防止策をとってきたジィルガの思惑も、
気紛(きまぐ)れ同然で、そのパーディーに出席することを決めたウィドウたちの成しように、次善の策を練らざるを得なくなってきたのです。
そして―――件のパーティーより帰ってきたブリジットに女禍を待ち受けていたのは・・・
いつもより少しばかり厳しい表情をしていた、そんなジィルガだったのです。〕
女:―――姉さん・・・
ブ:ジル―――・・・
ジ:―――あなたたち・・・仕様のない子達ね。
あなたたちの知らないところで、こちらとしてはやつらの出方を伺い、その芽を潰していたのだけれど・・・
今回だけは仕方がない―――何しろやつらが急に参加する意思表示を見せるんだもの・・・
ブ:―――申し訳ない、私が眼を離した隙に・・・
ジ:何もあなただけを責めよう―――と、云うのじゃないわ・・・ブリジット。
この子も、ああいった場とか・・・少しは人の目に触れさせないとね。
そういった面では、あなたの判断に間違いはなかった―――ただ・・・間が悪かっただけなのよ・・・。
女:―――それより姉さん、あの人は一体・・・それに自分のことを“誰でもない者”―――ヱニグマ・・・って。
ジ:違うのよ―――女禍、ヤツこそは一番に注意しなければならない・・・これからも眼を光らさなければならない存在・・・
<ブラックウィドウ>事実上のトップにして、“純粋なる悪意を持つ誰でもない者”・・・ヱニグマ―――
それこそがあの女の正体なのよ。
〔女禍も、その組織の概要だけは知っていました。
けれどそれは、所詮“噂”の範疇を超えず、未だ本質的なものは知ってはいなかった―――
しかしあのパーティーで図らずも対面してしまったこともあり、これからはそうも行かなくなったことを感じ、
“黒き衣の未亡人”たちの本質を見極めるべく、マエストロたる自分の姉からのレクチャーを受けることにしたのです。〕