≪三節;怨恨逆巻く≫
〔それはそれとして―――シャクラディアにおいては、ジィルガの指導により今後のウィドウ対策が講じられているところでした。〕
ジ:とうとう恐れていた事態―――あの組織の事実上のトップが蠢き始めたわ。
それについてはあなたたちはどう思ってる。
マ:オレは―――そう、過ぎる心配をしなくても良いと思います。
・・・と、云うのも、オレが最近取り込んだオーギュストとか云うヤツの情報からは、主立って目立った人材はこの三人・・・
“ビューネイ”“フォルネウス”“アウナス”・・・
ラ:・・・あら?あの男―――
マ:どうしたんだラゼッタ―――知り合いでもいたのか。
ラ:・・・ええ―――でも、知り合いと云った良いものじゃないわ、むしろ因縁の相手ね。
ア:ほお―――そいつは穏やかじゃないな。
ラ:こいつ・・・アウナス=ツェゲラ=ベルゼビュート―――
ヤツは以前私の母星であるボルケイトスに不法侵入をし、星の至宝でもある<ベルクラント>を強奪した男・・・
そのことにより私の母星の平和バランスは崩れ、私の種族であるハイランダーは、私を除いて絶滅の一歩手前まで追い詰められてしまった・・・
でも、そんなところに女禍さんやマエストロに助けていただいてね―――とても感謝しています。
ブ:ほお―――そんなことが・・・それにしてもマグラのほうでも認識しているということは、その組織がラゼッタの故郷を滅ぼした・・・
ジ:その見解は少し違うわね―――確かに、ラゼッタの説明ではアウナスという者はあの組織の一員であるかのように捉えがちになるけれど、
その当時のアウナスは、その辺にいるようなチンピラの類だったの。
その彼が、最近マグラに取り込まれた幹部の記憶に、ウィドウきっての要注意人物として捉えられている・・・
これ、どういうことか判る?
ア:そうか・・・スカウト―――曲りなりとはいえ、一つの星の均衡を保たせていたものを強奪したとなると、
その組織のお眼鏡に叶うところあり・・・と、云うことにもなる。
ジ:その通り―――さすがお姉さまの直弟子ね。
〔そこでは、シャクラディアのメインモニタルームを借り切って、これから拮抗することとなるブラックウィドウの組織としての全容を解明する、
一種の意見交換会が営まれていました。
まづ最初には、これから行く手を阻む障害ともなりうる、手強き幹部連中の紹介・・・
この情報を、ジィルガに敗北を喫しマグラの成長の糧ともなった、上級幹部・オーギュストからえるのですが―――
彼らの一人を見るなり自分の仇敵を見つけたラゼッタは、そこで彼の者との因縁・怨恨のある話をしたのです。
自らの故郷の惑星の均衡を崩し、剰(あまつさ)え惑星の至宝とも言えるべき宝を奪っていった・・・
そのおかげで保たれていた種族間のバランスが崩れ、今まで従えていた部族が一斉に蜂起―――
ようやく鎮めたものの、残る者は一人としていなかった・・・そう、言葉通りラゼッタを残すのみとなっていたのです。
そこを偶然のなせる業か―――たまたま通りかかり、ボルケイトスでの休息と食料・水の調達をしようとしていた、
≪シャンバラ≫と≪ソレイユ≫の艦長・・・女禍とジィルガの見たものとは、数百万とも云える屍の中に取り残され、
ただ呆然と佇んでいた―――・・・そんなラゼッタの姿だったのです。
そしてこのことを異状と認めた女禍の手により保護されたラゼッタは、それ以来恩義を感じて今日に至る・・・と、云うことなのです。
その一方で、自分たちの{フロンティア}と同盟を結んでいる間柄でもあったこの惑星に、艦の補給のために降り立った女禍ではありましたが、
話しには聞いていた景観とは随分と違ってることと・・・さらに抱え上げたラゼッタの身体の軽さに驚き、
元は美しい景観の惑星を変えたことと、一人の少女をここまで追い詰めさせた元凶を絶対に許しておくわけには行かないとしていたのです。
そして図らずも―――その者はそこにいた・・・しかも、自分たちの障害となるべく阻むようにして・・・〕