≪四節;アベルに降りかかる不幸≫
〔それはそうと―――時代を包み込む闇は、すでに色濃くなりつつありました。
この・・・蒼く美しき天体を我が物としようとするウィドウたちの動きは、今では世界各地にまで波及し、確実に蚕食し始めていたのです。
当然―――フロンティア側としても彼らの行動を見逃すはずもなく、各国各地において火花を散らす展開を見せ始めていたのです。〕
ラ:おやおや―――相も変わらず熱心なことだな・・・
黒:むむっ―――なにヤツだお前は・・・
ラ:私・・・か―――そうだな、ちょっと通りすがりの・・・お前たちのような蛆虫を見ていると我慢がならない者・・・だよ。
黒:・・・そうか―――お前、フロンティアに飼われている牝だな。
ラ:なんとでも云え―――どうせお前は・・・すぐに死ぬ。
マ:ふぅ〜―――何かと云えば、退屈な反応ばかりする・・・
いい加減―――この地球を半周もしているオレの身にもなってくれたまえよ。
黒:お〜おのれぇ〜―――ヴァンパイア風情がぁあ〜!
マ:そう・・・それだ―――その反応が退屈すぎるんだよ。
〔ウィドウと対抗した者の中でも、やはり群を抜いていたのはこの二人―――ラゼッタとマグラでした。
それに二人は、いわばこういうときのための “ゴミ処理係”―――フロンティアの<入植>を邪魔しようとする者を黙らせるために、そういう教育を施された者達・・・
だから、一つの処理を済ませたとしても、また違う方面へと駆り出されていたのです。
それよりも、元からのこの地球の住人でもある三人は・・・と、云うと―――
ブリジットは、元々ある素養を高く評価され、シャンバラ商会の運営という組織自体のかじ取り役を負かされていました。
カレンは、かつて所属していた組織のノウハウを生かし、情報の収集と操作―――それと商会のセキュリティや新たな技術の開発などに携わる、
いわば組織の基盤を組成する役目を任されました。
そしてもう一人―――アベルは・・・
アベルは、女禍やジィルガの師でもあるガラティアに師事したこともあってか、前述のブリジットやカレンとは比較できないほどのスキルや知識を兼ね備えていました。
だからこれから・・・ブリジットと共に、シャンバラ商会の二枚看板として君臨するはず―――・・・
ラゼッタやマグラのように、弊害となる者達に立ち向かっていく三本目の刃となるはず―――でした・・・
ですが彼は―――そんな高い能力を有効活用することなく・・・
いえ・・・事実だけを述べるならば、アベルの能力は シャンバラ商会には 有効活用することはなかった―――
つまり、これはどういうことかというと―――・・・
彼・・・アベル=アドラレメクの目の前には、なんとあの―――〕
謎:あの・・・もし―――?
ア:はい、なんでしょう・・・
謎:あっ・・・すみません、背後(うし)ろ姿が私の知っている方によく似ていらしていたものですから・・・
ア:―――そうですか、それは光栄の至りですね。
あなたのようなお淑やかな女性に間違われるなんて。
謎:まあ・・・そんな―――
あの、せっかくですから、お詫びにお茶の一杯なりとおごらせて貰えないものでしょうか。
ア:えっ―――ああ、これはまいったな・・・本来ならばあなたからではなく、オレのほうから誘わなければいけないのに・・・
ええ、かまいませんよ、お茶の一杯程度ならば―――