<第二十九章;閉ざされ行く未来>
≪一節;それぞれの目指す未来≫
〔その日は、何事もなく―――いつものように過ぎ行きました。〕
ブ:ああカレン―――開発部の進行のほうはどうだ。
カ:順調・・・と云ったところだな。
このまま行けば秋の中頃には完成する予定だ。
ブ:ほぉう―――早いな。
カ:当たり前さ・・・何しろここには機材も技術も凝縮してある。
わが合衆国の―――いや、この地球上にある技術、その総てをかき集めたとしても、これほどまでのものは出来なかっただろう。
そこは悔しいが認めないといけない・・・あたら自分たちが一番―――としていた頃が恥ずかしいくらいだよ。
ブ:・・・ああ、全くだな―――
〔ある日の息抜きの時間に、たまたま彼女たち二人が鉢合わせになりました。
元々―――彼女たちの出身国は違っていました・・・が、真の意味での敵同士になったことはなく、利害関係で対立することは少なくなかった・・・
それでも、テロ組織や“湾岸”という地域で展開された紛争ではお互いに協力し合っていたのです。
そう・・・彼女たちは、いわゆる―――将棋で云うところの駒に過ぎなかった・・・
ただ使われ―――棄てられていく駒・・・
けれど、そんな中でも彼女たちにとって主は主であったし、命令に服従することこそが使命のようなものだった・・・
いくつかの死線というものを乗り越え、現在(いま)という時を紡ぐる自分・・・
けれど今は違う―――今は、自らが意識し、“この人は・・・”と思う処に収まり、自らが修めてきたものを有用に活用している。
上からモノを押さえつける―――というそれではなく、初めて自分が“やりたい”と意識し、自主性をして動ける・・・それが本当の自由。
今までの“自由”が、そのことを笠に着て権力を振りかざしていた、ほんの一握りの人間の都合のいい“自由”だということに気づき始めた今、
またそうだとは判っていながらも、従属していた彼女たち自身に、宇宙(そら)からの来訪者たちの与えた影響は、大きかったといえたことでしょう。〕