≪二節;アベルの行方≫
〔それはそうと―――・・・〕
ブ:それよりアベルは―――
カ:今日のところはまだ姿を見せていないな・・・
―――どうした、『鉄の女二世』ともあろうお方が、彼のコトが気になるのかな。
ブ:フフフッ―――それを云うなら私ではなく、私たちの盟友(とも)が・・・だろ。
カ:私たちがどうしようもできなかったことを・・・あの彼が来た途端に―――だものな・・・
大きいよな、この差は―――
ブ:仕方がないだろう、あの姿はどう見ても地球の女性そのものだ―――・・・
この私とて、久しく思い出さされたよ・・・私自身が“女”であることを・・・な。
そのことを思い出させてくれたのが、盟友(とも)のあのリアクションさ。
〔つい先般、自分たちの盟友(とも)である女禍が、たまり重なる心労を因に塞ぎ込んでしまった・・・
そんな彼女を、自分たちがいくら励ましたところで徒労に終わった―――・・・
こんなにも、近くにいる、自分たちの励ましには何も応じてくれなかったのに・・・
それがアベルが来たと知る途端に、曇らせていた眉を晴れさせた―――・・・
そこには羨む気持ちがありはしたけれども、一組の男女の仕草を見る限りでは、地球しきのそれとはなんら変わるところはなかった・・・
宇宙人といえども同じなのだ―――・・・
ブリジットたちは、薄々ながらも気付き始めていたのです。
その一方で―――アベルを捕らえることに成功していた女は、自分の艦である≪リヴァイアサン≫ヘアベルを持ち帰り、
ありとあらゆる手段を講じて、彼を―――アベルの魂の色を、黒く塗り替えようとしていました。〕
黒:ヱニグマ様、堕落への五段階目が終了しました。
黒:ですが・・・今までと同じく、効果は薄いようで―――
黒:ですから、私どもとしては、もう一段階レベルを上げてみては・・・と、思うのですが―――
ヱ:ウフフフ―――・・・素晴らしいわ・・・。
“想い人”である女禍を思うあまり、抗うあなたの姿はとても美しい・・・
それに―――このわたくしのインファナルアフェアをまともに受け、堕落へのステップにこれだけ耐えた者をわたくしは知らない・・・
素晴らしすぎますわ―――アベル=アドラレメク。
けれど・・・そんな抵抗も所詮は無駄―――無駄な努力だと思い知ることでしょう・・・
〔壁からつられた鎖に手足を束縛され、現在アベルは、以前ラゼッタが受けたモノよりも数倍強力なモノを味わわされていました。
肉体の快楽はもちろんのこと、精神の快楽まで―――・・・
傷みではなく、存在そのものを柔らかく包み込み、蕩かせようとするその仕様は、
或る意味苦痛を伴わせる拷問や尋問の、そのどれよりも効果のある仕様といえたことでしょう。
そう―――喩えるなら、それは“快楽地獄”ともいえた所業でした。
ありとあらゆる誘惑・悦楽・快楽をもって、高貴なる魂を堕落せしめる・・・
それこそはまさしく悪魔の所業―――あわよ“天国”とも思えていたところが、実は“地獄”だった・・・ところのそれだったのです。〕