≪三節;快楽地獄≫
〔しかし―――それでも、アベルはその悉(ことごとく)に耐えました。
どんなに彼を誘惑しようとも、悦楽・快楽の蜜漬けにしようとも―――彼の魂は堕ちることがなかったのです。
・・・そのことに、少々焦りを感じ始めたのか、女は―――その仕様を変え始めてきたのです。
―――ところで・・・シャクラディアでは・・・〕
女:―――ねえ、ちょっと、アベルがどこへ行ったか知らない?
ブ:はあ・・・この城には、ここ数ヶ月顔を見せてはいないようですが―――
ジルのソレイユには行っていないんですか。
女:・・・おかしい―――彼ほどの人間が、これほどの期間にどこへも顔を見せていないなんて・・・
ブ:―――それでは?
女:うん・・・姉さんのところへは、先ほど私から連絡を入れておいた。
それからほどなくして、やはり同じ期間に彼の姿を見た者はいない―――と、云う回答が得られたよ。
ブ:・・・では―――彼の師であるガラティア様に・・・
女:・・・そもそも、私がアベルのコトを訊ねたのは、どうしてだと思う―――
ブ:―――まさか・・・
女:その通り―――ガラティア姉さんから、いつまでお使いに出てるのか・・・って、すごい剣幕で怒られてしまってね。
まあ―――彼のことだから、そのうちひょっこりと顔を出すものと思っていたんだけれど・・・
それに・・・以前あったあの女性のことも気にかかる―――
―――よし、ここはもう少し様子を見て、でもできるだけ迅速に彼の行方を捜すことにしよう。
〔女禍のクルーザーシャクラディアと融合を果たしたトロイメア城―――
そこに住んでいる女禍は、相談役でもあり盟友(とも)の一人でもあるブリジットに、現在アベルがどこにいるのかを訊ねました。
すると・・・ブリジットの口からも、先ほどソレイユにいるカレンに問い合わせたときと同じ返答が・・・
そこには―――ブリジットもカレンも、アベルに対し妬ける気持ちもありはするのですが、
そうでなくても女禍は、自分の姉であるガラティアから、いつまで愛弟子をそこに引き止めておくのか―――という、あたら皮肉めいた連絡を受けたことにより、
アベルの消息が判らなくなってきていたことに気がつかされたのです。
けれど―――それこそが大いなる油断でした。
何も、彼ほどの強者を拉致するような痴れ者はいない―――と、云ったような、そんな思いがあっただけに・・・
逆にしてみれば、そのことの真実が、大きなショックとなることだったに違いはなかったでしょう。
そのアベルも―――度重なる堕落のレベルアップに、ついに苦悶の表情を浮かべるまでになってきていました。〕
ア:うぐ・・・うぐぉおお〜〜―――っっ!! ぐあ゛ぁぁ・・・
黒:うぅ〜む・・・しぶといにもほどがある―――かれこれ堕落の段階を30まで上げてはみたものの・・・
黒:うむ・・・この装置ではこれが限界だ―――いかがいたしましょう、ヱニグマ様・・・。
ヱ:フフ・・・このわたくしも、久しく焦り―――と、云う感情がわいてきています。
遠い昔に失くした―――このわたくしの感情・・・その一つを呼び起こさせただけでも、あなたの行為は賞賛に値します。
だから・・・さあ―――アベル、もう抵抗などおよしになって楽におなりなさい。
ア:―――・・・。(ギロ)
ヱ:・・・そのような目つきはあなたには相応しくはありません―――
いつも・・・そう―――いつもあなたのことを想っている、そしてあなたも想っている、女禍を見つめるような眼で・・・このわたくしを見つめるのです。
そうすれば、もうあなたは耐えなくてもよいのですよ―――
ア:・・・そうか、判った・・・。
じゃあ近くまで来てくれ―――直接オレの口から・・・云って聞かせてやる・・・。
ヱ:ウフフフ・・・そう―――それでよいのです。
さあ・・・早く、このわたくしの耳元で、永久の愛を囁くのです―――