≪二節;盟友としての忠告≫
〔しかし・・・だからと云って―――〕
女:だからと云って・・・このままアベルを見殺しにはできない。
ここはやはり、私一人でアベルの救出に出ようと思う。
ブ:フッ―――囚われの姫君・・・ではなく、王子様を救出する女勇者・・・と、云ったところですかな。
まるでRPG崩れもいいところだ、とてもじゃないが付き合いきれませんな・・・女禍。
カ:ブリジット―――なんてコトを・・・
ブ:彼一人に固執しよう・・・などとは思わないことです。
何も、世には男性はアベル一人とは限らないのだから―――
あなたほどのいい女ならば、またいい縁でも見つかることでしょう。
女:・・・それは、盟友としての忠告なのか―――ブリジット。
ブ:・・・そうです―――。
あなたは今、アベルなんぞに現(うつつ)を抜かしているべきではない―――と、こう申し上げているのです。
・・・もし、私の言葉を聞き入れてくれず、このままアベルの救出に向かうようであれば―――
今までと、これからの付き合い、なかったことにしていただく―――私からの忠告は以上です。
〔意中の異性を囚われた者は―――そのことを無視し続けるわけにはいきませんでした。
そこをブリジットは、皮肉たっぷりに風刺し、罠だらけの処に敢えて行くことはない―――と、諭したのです。
そしてこの忠告に耳を傾けないのならば、自分たちの関係もこれまで―――と、云う、いわば 最後通牒 を突きつけたのですが・・・
それでも女禍は、忠告は忠告として受け止め、しかし―――もうすでに心に決めたことは変えるつもりもなかったので、
たった一人で―――ウィドウたちの巣窟へと向かったのです。
それをみて、何とか思い留まってもらおうと、説得に向かおうとしたカレンを・・・〕
ブ:―――行かせてやれ・・・
カ:・・・どういうつもりなんだ―――鉄の女二世。
ブ:・・・私如きが止めるまでもなく―――私たちの盟友はアベルを助けに行っただろう・・・
カ:―――はあ?
ブ:それに・・・あたら意中の異性を救うというのだ、私の忠言如きで躊躇してくれては困る。
カ:・・・あんた、まさか―――
ブ:フッ・・・それに、これはいい機会なのだ―――
何も私たちが、一つ処に固まって一つの事業に打ち込むことはない。
そろそろ個別ごとに動き出し、今度は別の方面からアプローチをして支えてやる・・・
カ:“個別の”―――・・・なるほどな、しかしやり口は・・・
ブ:フフフ―――・・・それにな、この企画はすでに秘密裏のうちに立ち上げてある、
あとは・・・どういった象(かたち)でここと縁を切るか―――だったのだが、いいタイミングでアベルが虜となってくれて助かった・・・
カ:ブリジット―――・・・
ブ:・・・これでいいんだ―――
私如きの忠告で、本当に思い留まってしまうようならば・・・それこそ私は、本当に盟友のことを見限っていたことだろう・・・
〔今回のことに関してのブリジットの忠告は、忠告をしたブリジットの予測通り―――聞き入れてもらえませんでした。
けれども、それこそがブリジットの思惑通り・・・
アベル救出のため出撃した女禍―――それを見送る形となったカレンに、ブリジットは静かに自分の胸のうちを語りました。
自分の 想い人 を―――どんなことであれあきらめたりはしない・・・
もし、自分が同じ立場であっても、同じコトを云い―――またするだろう・・・
そこで女禍が、自分の忠告に耳を傾け、意中の男性であるアベルを救いに向かわなかったら・・・
それこそが本当の終焉(おわ)り―――
女禍に感じていた魅力も、所詮上辺だけのものだった・・・
けれど―――自分が信じた盟友は、信じていた通りのコトを行った・・・
他者(ひと)は彼女たちのコトを 宇宙人 ―――と、云うけれど・・・
女禍の、他人を想う感情は、自分たち地球人よりも優る―――
それでこそ、自分も用意していた計画を進めやすくなる。
ブリジットの立てていた計画は、女禍の傘下で事業を推し進めていくことではなく、
いわば本体である シャンバラ商会 を外部から支援するため、いかにそこから離脱するかにあったのです。
そのあと―――ブリジットは呑んでいたシガレットの火を消すと、カレンに『あとのことはよろしく頼む。』・・・と、だけ云って、
シャクラディア商会であるトロイメア城を後にしたのです。〕