≪三節;奪還≫
〔その一方―――盟友の忠告を振り切って、ロシアのサンクトペテルブルグにある、
ブラックウィドウの巣窟“コキュートス”に現れた女禍は・・・〕
黒:な―――なんだお前ぇは!
黒:し・・・侵入者だ〜〜―――!
――すでにそこには・・・普段穏やかな彼女はいませんでした――
女:動くな―――抵抗しなければ、私とてお前たちを傷つけようなどとは思わない。
黒:しゃらくせえ―――ヤロウども、ブッ放せ!!
――そこにいたのは、奪われた者を取り返しに来た勇者の如きか・・・――
――いや・・・それとも・・・――
黒:う―――うわっ! なんだこいつは・・・レーザーが弾かれるどころか、吸収されてやがる?
女:無駄なことが判ってもらえたかな・・・それに、私は急いでいるんだ。
そこをどいてもらえないか―――
――“怒り”という感情が支配しつつも、それを押さえ込み――
――しかし確実に焦っていた者は・・・――
――その存在こそは 光る翼 と 権威の外套 を羽織る――
――その存在こそは 執行官<エクスキューショナー> ・・・――
――自らの抱く 正義 を貫き続け、罪ある者を裁いてきた・・・――
――紛れもなく 神 に一番近き存在だったのです――
〔仮想の“敵”として認知していたソーリアム・・・いや、今となってはブラックウィドウの本拠ともなっている、
ロシアのサンクトペテルブルグにあるその建物は、周辺の住民からは“伏魔殿”と呼ばれて気味悪がられてきました。
それもそのはず―――その建物こそは、ウィドウたちの本艦である リヴァイアサン に通ずる、いわば入り口のようなもの・・・
ウィドウ首領・ヱニグマの持つ巡航艦 コキュートス そのものなのだから・・・
そんな場所に突如現れ、ここの職員と火花を散らしている―――
そのことを感じ取ったヱニグマは・・・〕
ヱ:うフフフ・・・莫迦な人―――もうアベルは、わたくしのものですのに・・・
聞こえていますわね、アベル・・・いえ、絶対聞こえているはずですわ―――
何しろ、二人とも愛し合っていたんですもの。
ウフ・・・ウフフフ―――フフフ・・ハハハハ!
けれど、あなたという存在を再び眼にしたとき、女禍はどんなリアクションをしてくれるのでしょう?
わたくしは今一番それに興味がある・・・
〔そして、コキュートスに駐在する構成員に向け、その存在に絶対手出しをしてはならない、自分の下まで来させるよう命令を発したのです。
対して女禍は―――コキュートスに転移してきた当初から、執行官形態<エクスキューショナーモード>になっていたことを鑑みても、
今回の意気込みを見て取れようというもの・・・
紡ぐ言葉が穏やかであっても、すでに内には地獄の業火より熱いものが燃え盛っているのでした。〕