≪四節;反目しあう者同士に感じあう違和感≫
〔こうして両者は、相対峙しあうこととなりました。
初対面ではない者同士・・・それでも、互いの顔を確認しあうまで見続けていました。
女禍は―――こんなことがなければ、自分自身でさえ見惚れてしまいそうな容貌の持ち主を、
しかしココロのうちに抱えている負の感情や欲望の濃さに、残念だと思っていました。
片やヱニグマは―――口元には笑みを湛えていても、眸はそうではありませんでした。
そのときふと浮上した何か―――・・・
云うなれば・・・云いようのない“宿”のようなものを感じ始めていたのです。
その 何か とは、この当時当人同士でさえ気付くものではなかったようで、
しかも当時は、後世にて明らかとなることの、それに至るまでの確証要素が足らずにいたために、
無益な闘争に発展してしまったのは、是非もなかったのです。
そして、その口火を切ったのは意外にも―――〕
女:ヱニグマ・・・アベルを返してもらいます―――
とりあえず今回のところは、それで引き下がりましょう・・・。
ヱ:うふふ・・・まぁあ驚いた。
わたくしはてっきり、アベルを取り戻すためにここを破壊し尽くすものだと思っておりましたのに・・・
女:・・・本当は、それでも構わないと思っていた―――
けれども、それではお前たちと同じになってしまう。
だから・・・私は―――・・・
ヱ:フン・・・愚かな―――
女:ナニ―――?
ヱ:だってそうでしょう?ノーブルエルフ・・・
欲しいモノがあれば“奪う”―――ただ、その手段が強引かそうではないか・・・ただそれだけの違い。
本質的にはなんら変わることなどないのですよ。
女:黙れ! 私は、アベルを返して貰いに来た・・・それだけだ!
ア:あらあら、ウフフ―――・・・余裕がなくなってきていましてよ、ノーブルエルフ・・・
〔当初女禍は、ヱニグマの云う通りコキュートスを破壊してから、アベルを捜索し連れ帰ろうとしていました。
けれど、不意に侵入した―――最初はそのことで多少なりともの抵抗がありはしたのですが、
何かしらの指令が出たのか、途端に彼らの抵抗がやんだのです。
それに女禍のほうも、無用な血は流したくはない―――それに、こちらの責任者も自分との対面を望んでいる。
そう思い、改めてヱニグマと対面したとき、吐いて出た言葉があの言葉だったのです。
するとヱニグマは、そんな女禍の気持ちを見透かしているかのように挑発をしてきたのです。
そう・・・女禍の種族である ノーブルエルフ という単語を引き合いに出して・・・
そして我慢の限度にきた女禍は―――〕
女:もはや話し合いの必要性は認められない。
少し強引だけれど、アベルを返してもらいます!
ヱ:(かかった―――) 今です―――!
女:ナニっ―――? (背後(うし)ろ・・・)―――アベル??
〔もはや話し合いの余地すらないとした女禍は、アベルを奪還するために臨戦態勢に入りました。
すると・・・そのときを待っていたかのように、ヱニグマは何者かに号令をかけたのです。
そう・・・何者か―――に・・・
そして、今にもヱニグマに飛び掛ろうとしていた女禍は、背後からその何者かに引き止められたのを不審に思い、そちらを振り返ってみれば・・・
その何者か―――とは、アベルなのでした。
けれども・・・
そう―――女禍を引き止めたアベルは、間違いなくヱニグマの指示の下動いた・・・
しかし、そのことを不審には思ったけれども、自分を羽交い絞めしている者をアベル本人だと思い込んだ女禍は・・・〕
女:良かった・・・アベル―――無事だったんだね。
さあ・・・帰ろう―――皆の下に・・・