≪五節;偽りの存在≫

 

 

〔そのアベルに、女禍は一緒に帰ろう―――と、諭すのですが・・・〕

 

 

ヱ:アハハハ―――!ナニを云っているのあなた、少し頭がおかしいんじゃない?

  今その人は、私の云う通りにしたのですよ。

  それに御覧なさい、今のあなたの言葉に耳を傾けているように見えます?

 

女:なんだって―――でも、これはアベル・・・

 

ヱ:―――サウロン、こちらにおいでなさい。

サ:・・・はい―――

 

女:・・・え? なんだって―――今、アベル・・・

 

ヱ:しつこいわね、あなた―――何度も同じコトを云わせないでいただける?

  この人はね、アベル=アドラレメク―――ではないの。

 

  けれど元は同じ存在・・・アベルはサウロンであり、サウロンはアベルである―――

  これ、ノーブルエルフであるあなたなら判りますわよね。

 

女:〜なんということを・・・アベルを―――アベルの存在を、アベルの魂を割いたというのか?!

  それがどんなことだか―――・・・

 

ヱ:判っていますわ―――かつて、宇宙一のマッドサイエンティストとして畏れられた男・・・オルトロス=ミンクス=ザミエル―――

  あの男が、イクスシター星系の住民をベースに人体実験を繰り返し、存在の分割化に成功した。

 

  フフ―――我がブラックウィドウも見よう見真似とはいえ、こうも簡単に成功するとは思ってもいませんでしたわ。

 

女:そ―――それでは・・・アベルは・・・

 

ヱ:―――アベルは? もう判りきっていることなのでしょう。

  存在を割かれた者が辿る末路など―――・・・

 

 

〔それは・・・存在を割かれた側(いわゆる本体)の自然消滅を意味するということ。

 

第一に、そのようなことは当時として最も忌むべき行為でした。

 

それを、狂気の科学者は熱心に研究し、成果を得られた―――

しかしこの事実は物議を醸し、法的にも・・・また倫理的に悖(もと)ることだとし、須らく断罪の決定が下されたのです。

 

ところが・・・この禁忌の技術が、現実として女禍の目の前にあるということは一体―――・・・

 

けれど、これが現実である以上、女禍のとるべき行動はたった一つ―――なのですが・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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