≪六節;終極無間の闘争―――その始まり≫
〔一方その頃―――ウィドウ旗艦リヴァイアサンでは・・・〕
ヱ:フッ―――その形態でこの程度とは・・・どうやらあなたを少しばかり買い被り過ぎていたようですわね。
女:―――・・・。
ヱ:フフ・・・これでは、あなたを慕っていたあの地球人の牡―――
女:・・・のことか―――
ヱ:・・・なんです、もう少し判り易く、大きな―――
女:アベルのことか―――!!
お前さえ・・・お前さえこの世に存在しなければ、アベルもあんなことにはならなかったのだ!!
ヱ:(うっ・・・く―――ようやく本気になりましたか。
ですが、それでこそ・・・それでこそ私のモノになるのに相応しい―――!!)
〔私は・・・自分を許さない―――!!
力での衝突はほぼ互角―――しかし互角では早期決着に持ち込むことができず。
また二人もそれを望んではいませんでした。
私は・・・私自身を許すことができない―――!!
だからこそヱニグマは、自らがこの決戦でのイニシアチブをとるため、女禍を挑発してきたのです。
その策略に女禍は載せられ・・・自らの激情に身を委ねた―――・・・
悪は滅すべし―――!!
けれど、それこではまさにヱニグマの思うつぼ―――それ故に、ヱニグマの口許には勝利を確信したかのような笑みが浮かんだのです。
ところが―――・・・
それも一瞬の出来事―――
ヱニグマは、自らの策略で、思いもよらなかった者を招き寄せてしまったのです。
信じられない―――・・・
この者は、聖なる属性を持ちうるはずなのに・・・
なのに―――なぜ、今のこの者の身体からはわたくしと同様の気が・・・
“陰”にして“闇”なる気が―――・・・
しかも―――この者が生来より持つ属性と、完全に融合している・・・?!
そんな・・・有り得るはずが―――!
一つの存在に、“陰”と“陽”が介在するはずが―――!?
突然・・・ヱニグマの前に現れた、ある思いもよらない存在―――
しかし、それこそは女禍のもう一つの姿・・・ 禍神 ―――
けれども不思議なことに、このときの女禍は理性を失ってはおらず、その代わりとして戦闘能力の数値が飛躍的に上昇していた・・・
そのことにヱニグマは―――躊躇していたのです。〕
女:・・・覚悟は、出来ているな―――
ヱ:莫迦な・・・お前は―――?!
くうっ・・・ インファナルアフェア ――――!
女:―――喝!
ヱ:(そ・・・んな―――! 気合いだけで掻き消した?!)
〔私が・・・もし・・・私自身と云う 個 を確立させていたなら―――
他者の言動に左右されることなどなく、私が知り合った者も傷つくことはなかった―――・・・
だからこそ、私は私自身を許さない―――・・・
喩え、眼前の悪一つを滅ぼしたとしても、この私の罪は拭いされるわけではない―――・・・
自分自身への、激しいまでの憤り―――・・・
それが女禍の持ちうるポテンシャルをも超え、また新たな存在の極みへと転化していったのです。〕