<第三十五章;総ての終焉(おわ)り―――そして始まりへ・・・>
≪一節;闘争の決着≫
〔自らの持つ強力な術――― インファナルアフェア ですら、その者の前では意味を為し得ませんでした。
かつては、その強力な術で総ての存在を翻弄し続けたのに―――・・・
それに、以前までは自らの前に立つ敵対する者には有効だったのに・・・
それが―――はたと止んでしまった・・・効かなくなってしまった・・・
しかも、この者は“純然たる悪意を持つ者”の予測を、遥かに越え出した―――・・・
当初は 神聖 な存在なのに、時たまに総てを破壊したくなる衝動に駆られる 邪悪 なる存在に転化をするケースがある。
それが“堕天”と云うものであり―――その時こそが、自らがその者を虜とできる好機だと思っていたのに・・・
それが今は―――・・・ 神聖 なる輝きを持ち合わせたまま、自らよりも深い闇である 邪悪 さを思わせるモノを感じる・・・
しかも、相反する属性同士が反発をせず、丁度よい具合に織り交ざり、完全に融合し一つの 個 として確立をしている・・・。
この者を―――わたくしの獲物を―――女禍を・・・こんな風にしてしまったのは・・・
―――わたくし自身??!
すると、わたくしに出会わなければ、この者は・・・一人のノーブルエルフとしての 個 を確立していたはずなのでは・・・?
それでは・・・わたくしに出会ったからこそ、女禍は―――??!
ヱニグマは、次第に女禍を見初めたことに疑問を抱き始めました。
どうして自分は―――こんな畏ろしき者に興味を抱き始めたのだろう・・・
どうして彼女に―――最初に出会った時に、この恐怖を感じなかったのだろう・・・
どうして・・・自分と彼女は・・・お互いが引き寄せあってしまったのだろう―――・・・
―――すると・・・ヱニグマがそんな思索をし始めたと同じく・・・〕
女:―――お前がどう後悔したところで、もう遅い。
お前は、私に隠された邪性を引き出してしまったんだ。
私に隠された・・・この邪性を―――!!
見るが云い・・・この、禍々しく彩られた今の私を―――!
だが、逆に感謝するところもある―――
過去には、私の内での邪性の支配率が逆転をして、この惑星にあった強大な国家の一つを滅ぼしてしまった・・・。
しかし、今もあの時と同じ―――同等の憤りを感じているのに、私が抱える 光 も 闇 も、程よく織り交わっている。
こんなことは初めてだ―――・・・けれど、姉さんたちが云っていたことが今、ここではっきりしたよ・・・
―――それでは、始めるとしようか・・・