≪三節;“繭”の形成≫
〔そしてこの闘争の結末の有り様は、地上で闘争を繰り広げている者達にも感じ取れていました。
巨大かつ強大な二つの力がぶつかり合い―――
闘争の幕切れを示すと思われる、ある一つの強大な力が次第に小さく弱く萎(しぼ)んでいった・・・
その代りに、後に残ったもう一つの強大な力の持ち主は、神々しいまでに光り輝いていたことを・・・
ウィドウ側は、自分たちの首魁の敗北・消滅を―――
フロンティア側は、指導者の完全なる勝利を―――
各々が分かち合ったのです。
―――が、しかし・・・〕
エ:よし、やった―――! オレ達の完全勝利だ!
ス:ああ―――これでようやくこの惑星にも平和が訪れるな!
ジ:―――それはどうかしら。
エ:な―――なんだって??! どうしてそんなことを云うんスか!師匠!!
ス:そうですとも、今、私たちが感じている気は、まぎれもなく女禍様の・・・
ジ:―――観測官、かの地の数値を割り出して・・・
観:そ・・・それが―――・・・
観:シャンバラ艦長の闘争が終結すると同時に、かの地の質量が膨大に増幅中・・・未だ持って留まるところを見せません―――
観:1億3千万・・・1億4千万―――信じられない、未だに増幅中・・・1億8千万、1億9千万・・・
観:あっ―――ようやく数値が安定した模様です。
観:数値、2億8千万で固定―――それと同時に“繭”を確認いたしました。
こちらからは手出しが出来ないようになっております。
ジ:そう・・・判ったわ、ありがとう。
〔ブラックウィドウたちが本拠としている地点まで引き上げた理由―――
それは、思っていたより苦戦を強いられたわけでもなく、本拠を中心とする周辺を“繭”と云う強固な防御システムで覆うことにあり、
それが完成したからそこへと引き上げたまで―――
では―――だとしたら、なぜ彼らの首魁であるヱニグマが、そこから出てわざわざ女禍と直接対決しなければならなかったか・・・
その理由とは―――〕
ジ:何、簡単なことよ・・・つまり、彼らは自分たちのトップの首を挿げ替えただけ―――
今までのトップであるヱニグマを切り捨て、新たなるトップであるサウロンを戴いただけの話・・・
抜かったわ―――つまりヱニグマは、囮役にすぎなかったのよ。
今、あの“繭”の内に篭り護られているのが、本当の意味でのウィドウの主戦力だとしたなら、
あの女が女禍ちゃんと一人で対決する意味も、どことなく理解できてくるわ・・・。
エ:くそっ―――!そういうことだったか・・・!
ス:・・・だとしたならどうして―――
ジ:・・・私たちは、もうすでに後手に回っていたのよ。
“繭”が形成されるまで、あの周辺には強力な結界を配備し・・・“繭”を壊そうとする者達を虜にする―――
私も甘かったわ・・・こんなことなら、早くヤツらの拠点を総て叩き潰しておくべきだった。
〔そこには、あのジィルガでさえ賞賛した、見事なまでの交代劇があったのです。
旧・頭領であるヱニグマから、新・頭領である サウロン=カルマ=アドラレメク に、ウィドウの総ての実権を委譲した瞬間がそこに・・・
ならばどうして、こんな厄介な出来事が起こる前に―――と、マグラやラゼッタは歯痒い気持ちになるのです。
しかし―――それこそがウィドウたちが念入りに行っていた準備であり、そこにはヱニグマの敗北・消滅すら計画内に織り込み済みであったことが伺わせられるのです。
そして、これから気の遠くなる年月、彼らの間で不毛な争いは紡がれていくこととなるのです。〕