<第六章;―――禍ノ神―――>
≪一節;安全装置の崩壊≫
〔総ての武器には安全装置なる“リミッター”が必ず付いていると云う・・・
銃 の<セイフティレバー>
然り
刀 の<鞘>
然り―――・・・
それでは生身で戦う<格闘>は―――?
それはすでに人間の生体・・・<倫理・道徳感>に備わっているといいます。
人間は、その生涯のうちで、その三割もの力を引き出せればよい―――と、されており、
特殊な訓練だとか、希に世に生まれてきた“恵まれた”者で、約七割の力・・・
そう―――その大部分は、使われないまま終わってしまう・・・
それが“生体”のリミッターといっても過言ではないでしょう・・・。
でも―――もし・・・その箍が何らかの作用で外れてしまったなら―――?
それこそが、哀しき“彼女”の≪最終形態≫だったのです。
その一方で―――ジィルガの艦『ソレイユ』では・・・〕
乗:艦長―――! 女禍執行官が、かの建物の中心部に侵入・・・
それとともに“ゲージ”のほうが――――・・・
ああっ―――!! 今・・・完全にコスモ≪秩序≫からカオス≪混沌≫に・・・・
ゲ・・・ゲシュタルト崩壊―――!! ≪禍神≫ が現れます!!
〔それは―――完全に理性が失われた存在だという・・・
それは―――“聖”なる者が背き、“邪”なる者へと転化してしまった姿だという・・・・
それは―――信じている者に裏切られた者の・・・哀しき末路だという・・・
それは―――・・・
それこそは、“憎しみ”と“悪”に彩られた―――『絶対になってはならない存在』・・・
――禍ノ神――
【 禍 神 】
そして―――その姿を見てしまった二つの小さき存在と、このものの“姉”は・・・〕
ラ:あ―――ああ〜〜ッ・・・
マ:あぁ―――・・・はあぁっ・・・!!
ジ:(とうとう・・・なってしまったわね―――)
それに、もはやこれまで―――至急かの場所までゲートを開いて頂戴。
乗:は―――はいっ、かしこまりました。(・・・カタカタ)
マ:(え・・・っ)先生―――行って何をなされるおつもりなんですか?!!
ジ:(フ・・・)決まっているでしょ―――あの子が真の悪の名に染まる前に、止めるのよ。
ラ:お願い―――どうかお願いします!! あんなにお優しいあの方が・・・あんなになってしまったのは、何かの間違いです!!
マ:ラゼッタ―――・・・
ラ:だから〜〜―――・・・お願い・・・あの方を、助けてください・・・。(ポロポロ)
ジ:・・・ようく、判っているわよ―――ラゼッタちゃん。
私も・・・あの子のあんな姿を見るのは辛いもの―――・・・
ラ:ほ―――本当ですか??
ジ:・・・ええ―――(ニコ)
乗:ゲートつながりました――――
ジ:それじゃ・・・行ってくるわね、大人しく待っていなさいよ。
ラ:はいっ―――
マ:はいっ―――
〔総ての存在に仇なす悪しき存在―――それを見た途端、持ち合わせていた倫理観そのものが崩れ去り、
その“悪しき存在”もろとも、この忌まわしき『五角形』の建物も抹消してしまおう・・・
ただそれだけが、その者の頭の中にあったことでした。
でも、それは、同時に『破壊を好む者』であり、そのままにしておけば、全世界を破滅しかねない・・・
そうなる前に、姉であるジィルガが女禍を止めようというのです―――〕