≪五節;揶揄する言葉≫
〔その一方―――自分の艦である<シャンバラ>へと戻ってきた女禍は、
何も考えることなく、かろうじて一命を取り留めていたアベルの下へと寄っていたのです。〕
女:(アベル―――済まない・・・私の不慮の所為で君をこんな目に・・・遭わせてしまうなんて・・・)
ア:う・・・うぅ〜〜――ン・・・(ぱち)
あ・・・あれ―――?! こ、ここは―――・・・?
女:アベル―――?! ああ・・・よかった―――気が付いたんだね。
ア:お姉さん―――? それより・・・ここはどこ?
なんだか―――まるで見たこともない施設のようだけど・・・
それに―――お父さんは??おばあちゃんは??
女:・・・アベル―――
〔瀕死であったはずのアベルの身体は、この艦に搭載されている最新の医療器具のおかげで、
そのほとんどが治りかけていました。
それでも――― 一番に心配したのは、自分の身よりもまづ・・・祖母であり、父親の安否だったのです。
ですが・・・女禍は知っていただけに、本当の事を話そうか迷いました―――
でも、事実はやはり曲げられない事とし、思い切ってあるがままの事を話したのです。
すると―――やはり・・・〕
ア:そ―――そんな・・・うわぁぁ〜〜ん! そんなぁ―――おばあちゃんが・・・父さんがあぁ〜〜!!
女:アベル―――・・・
〔やはり―――齢(よわい)の少ない者は、自分の近親である者の死を知ると、大声で泣いてしまいました・・・
そんな彼を見て、やはり真実は伝えるべきではなかったか―――と、省みる女禍・・・
すると―――医務室の片隅にて、このやり取りを始終見ていた存在から、こんな声が・・・〕
―――なんてだらしのない・・・
ア:えっ―――・・・君は?
女:ラゼッタ―――どうしてここに・・・
ア:(ラゼッタ―――? これがこのこの名前・・・)
ラ:どうも初めまして・・・。
でも、そうは言いましても、私もあなたに救ってもらったんですもの、
行動を共にしたい―――と、願うのは当然の成り行きではありませんか。
ア:救ってもらった―――・・・って、なにを?
ラ:私も―――あなたと同じ・・・
ア:えっ―――?!
〔それは―――あの少女・・・ ラゼッタ なのでした。
ですが、彼女がそこにいた―――というのも、どうやらワケがあるようで・・・
すると彼女の口からは、やはりアベルと同じくして、過去に女禍たちに救ってもらったことがある―――と、しているようなのですが・・・
だとしたなら、ラゼッタは地上のどこの地域で―――??
いえ・・・正確に言うのならば、彼女が救われたのはこの“地球上”ではないのです。
それでは一体どこで―――?
ここで読者諸兄には、よく思い出して頂きたい・・・
“現在”―――彼らがどこにいるのか・・・と、人の姿に酷似していながらも、ほんの少しだけ差異の認められた、
二人の 少年少女 の事を―――・・・〕
ラ:私も―――今のあなたと同じように、私の惑星で巻き起こった紛争がきっかけで、
二親を亡くした存在なの・・・。
ア:えっ―――そうなんだ・・・。
でも―――待てよ? 今・・・君の惑星―――って云ってたけど・・・どういう事??
ラ:(ウフフ・・・)窓の外でも見てみる―――? 今日は星が綺麗よ・・・
ア:えっ―――そう??
ラ:ええ―――・・・特に、あそこで一際蒼く輝いて見える天体は・・・ね。
ア:蒼い―――・・・あれっ?? あれ・・・って、『地球』?
ちょっと前にTVで見たことがあるけれど・・・今、ボクが見てるの―――って・・・『地球』じゃあないのか??
ラ:(ウフフ・・・)そう―――御覧の通り・・・。
今、あなたがいるところは、この女禍さんの持ち艦である{フロンティア}所属の<シャンバラ>っていう艦なのよ。
つまり―――あなたは・・・
ア:えぇええ〜〜―――っ??! ひ、ひょっとして、もしかすると、ここ・・・って宇宙船の中ぁ?!!
じ―――じゃあ・・・君たちは・・・
〔そして―――少女・ラゼッタも、自分の住んでいた惑星にて、紛争の最中(さなか)に両親を亡くした・・・と、云ったのです。
ですが、そこでアベルは少し不思議に思ったのです。
そう―――このラゼッタが、『自分の惑星』と云っていた事に・・・
すると―――ラゼッタは窓の外を見てみようと言い出したのです。
そこでアベルが目にしたものとは・・・ほんの少し前―――PLOに入隊する直前に、
TVの画面に映し出されていた、あの・・・蒼くも美しい天体―――地球―――が・・・
そう―――今、自分たちは宇宙にいるということを、そこで知ることとなったのです。〕