<第九章;見定めるべきもの>
≪一節;ある―――“保養地”での話し合い≫
〔あの惨劇の日より、幾許(いくばく)か時は流れ―――・・・
突如として“交信”“接触”などが出来なくなった大国・米―――・・・
その真実を確かめるべく、情報部員を送り込んだほかの先進国は、目を背き、覆いたくなるような現状が、
この超大国に降りかかったことを知り、それではこれからをどうするべきか―――と、
どうしてこんな事になってしまったのか・・・の、原因究明を同時進行するべく、
ここ―――『黒海』に面する、比較的温暖な“保養地”・・・<ヤルタ>にて会合を行っていたのです。
ですか、それこそはまさに異例の事態―――・・・
あの忌まわしき二度目の世界大戦終期に、枢軸国の一つの処分と、極東の島国にどう対処すべきか・・・を、
話し合われたことのある彼の地にて―――今再び、露仏伊独英・・・この五カ国の裏の代表と呼ばれるべき者達が、
真摯に膝を交し合い、検討しあっていたのです。
それは―――米合衆国・・・壊滅の日より、一ヶ月が経とうとしていた頃でした・・・。〕
ル:(ルドルフ;男;独代表者)
まぁったく―――情報部のヤツらも質が落ちたもんだわい・・・。
一ヶ月も時間を与えて、たったこればかししか成果が上がっておらんじゃあないか・・・。
サ:(サウザー;男;伊代表者)
まあ―――まあ―――それも致し方のない事・・・。
彼の国が保有していた総ての 核 が、なぜか次々に自分の国に落ちたのだというのだから・・・な。
ギ:(ギュスターヴ;男;仏代表者)
しかも―――それらの巻き起こした『死の灰』や『黒き雨』は、“東海岸”は云うに及ばず、
対岸の“西海岸”までも拡まったというじゃないか。
ト:(トロツキー;男;露代表者)
フン―――・・・永きに亘(わた)って、自分たちが『世界の盟主』たらん事よ―――・・・と、気取っていたからだ、
全く目も当てられない・・・。
ブ:(ブリジット;女;英代表者)
―――――・・・・。
――わいわい・がやがや――
〔彼らは―――なんというべきか・・・滅んだ国に対し、あまり好意的ではありませんでした。
しかし、それも無理らしからぬ事―――このほど滅んだ国は、強引なまでの外交政策と、政治的策謀において、
彼ら―――・・・のみならず、世界各国を跪かせてきたのだから・・・。
だから―――滅んだ事を悦びはすれども、嘆くものなどそこには存在だにしなかったのです。
ですが・・・惜しむらくは、確かにこの世界の リーダー・シップ を常に取っており、
なににおいてもまづ米―――・・・の風潮は、逆らえなかったところもあったのです。〕