≪五節;通話者≫
〔その前に―――当初ブリジットと対話をした者とは一体誰だったのでしょうか。
その者と、近くにいた者と併せて検証をしていきたいと思います。〕
ガ:(ガチャッ――☆)はあぁ〜〜―――あ、全く・・・・
こちとら貫徹続きで、ロクに眠れとりゃあせんちゅうのに・・・誰のかと思ったらあの子のだったよ―――(ふわぁぁ〜)
ジ:(がば――・・・)“あの子”――――って、ひょッとすると女禍ちゃんの??!
じゃあ―――こうしちゃいられないぢゃないの・・・私も行かなきゃ―――
ガ:ちょいとお待ち―――(ガッ――☆)
ジ:(ぐえ・・・)お―――お姉ぇ〜様・・・
ガ:あんたねぇ〜〜―――あの子にお熱上げるのは判らないでもないけど、
ちゃんと自分のことをしてから行きなさいよ?!!
ジ:“自分の事”―――なら、あの子にやらせてますけど・・・。
ガ:あ゛あ゛?! “あの子”―――っつて、アベルって子は、女禍ちゃんが私のためを思ってくれた、助手兼の弟子だろ??!
それを゛―――・・・この私に無断で使っとるのか!お前は!!#
ジ:まあ〜〜―――いいぢゃないですか・・・弟子の一人や二人ぐらい・・・
ここは一つ―――仲良く、姉妹共有ということにいたしませぇん?
ガ:・・・もし私が断ったらどぅ〜する。#
ジ:あぁ〜〜ら、そんなことは出来ませんわよ―――
ガ:―――なんで・・・
ジ:だぁ〜〜―――って、ほら♡
〜どんっ!〜
ガ:お゛お゛っ―――! こ・・・これは!!
ジ:(フフ〜ン♪)いかにも―――この界隈で作られている、果実醸造酒の1200年モノの“ヴィンテージ・プレミア”ですわよ・・・(ムフフフ・・・)
ガ:う゛――――うぅ゛〜〜ん・・・こいつは私が捜し求めてた一品・・・
しかも、ネットオークションで出されていたのを落札しようとしてたのに、直前で値をバカみたいに吊り上げてたのがいたけど・・・
あんただったのねぇ―――
ジ:(ニヒヒ・・・)どぉ〜〜―――します?♪ お姉さま―――♪(ニタニタ)
ガ:・・・ったく、仕様がないねぇ、わ〜〜かった、弟子の共有の件は認めよう―――
ジ:(うっしゃあ〜〜―――!)(ぐッ!!)
ガ:―――けど、あの子の下へは行くんじゃあないよ。
ジ:・・って、ええぇ〜〜―――っ!?(不満げ) なぁんでですかぁ〜?!
ガ:どぉ〜〜―――も、あんたが一枚咬むと、ややこしくなりそうだから・・・さ。
さぁ〜〜―――て♪ 起き掛けの一本を空けるとしようかねぇ〜♪
〔そう―――ブリジットが初めに通話をした相手というのは、何とガラティアだったのです。
しかもこの方は、研究のための徹夜続きで、少々お疲れ気味のご様子―――と、そこへ、
連絡のための黒電話がけたたましく鳴ったものだから、不機嫌になろうというもの。
でも、それは末の妹である女禍への連絡であったため、彼女に回線を廻し、これでゆっくり休める・・・
―――と、そう思っていたら、同じ処で雑魚寝をしていた、真ん中の姉のジィルガが、
今の黒電話は『愛する妹に関するもの』だとそう直感をし―――まづ何より先に、女禍の下へと馳せ参じようとしたのです。
―――が、世間はそうは甘くなく、一緒にいた一番大きい姉であるガラティアからは、
自分とジィルガがしている研究を、途中でほっぽり出してそちらへ向かおうとするのは何事か―――と、
カミナリ教師顔負けで叱咤したのですが、なんとそこで発覚した事―――
末の妹が、日頃研究に追われている自分のためを思って貸し出してくれた『生贄』―――
いや、もとい、『助手兼弟子』のアベル=アドラレメク・・・その彼を、
なんと自分の許可なく無断で使用していたことが明るみに出てしまったのです。
そのことが判って、厳しくジィルガを叱責―――は、するのですが・・・
実はジィルガの方でも、予めこういう事態になることは予測していたらしく、
姉の好物そうな『高価な特級酒』を供物として捧げたところ、何とか『弟子』の共有は認められたものの、
妹の下へと行くのはまかりならん―――と、強く釘を刺されたみたいです。
その一方―――本来の通話者である女禍のほうでは・・・〕
女:(ピ☆)はあぁ〜〜―――・・・
もう―――お前たちがここで喧嘩をするから、この城の持ち主の人が怒って切ってしまったじゃあないか。
ラ:ご〜・・・ゴメンなさぁい―――(グズ) でも、マグラが―――
マ:だからさぁ〜〜―――少し掠っただけだと云ってるだろ? そいつを大袈裟にとるんだもん・・・
ラ:(む゛〜!#)とるわよぉっ―――! も゛ぉ〜〜あんたってヤツはァ!!#
女:(はあぁ〜〜・・・)コラコラ―――云ったそばから喧嘩をするのはよしなさい・・・。
(全く―――ここでの移植を開始するために、適当な拠点を見つけなければいけない・・・と、思って降りたきたはいいけど―――
初日からこれでは先が思いやられるなぁ〜〜・・・。
―――待てよ・・・? もしかして姉さんたち・・・この子達がこうなる事を予め推測した上で、お守りを私に押し付けたぁ??!
そ―――・・・そんなこと・・・ないよねぇ〜〜・・・?)
―――考えると、キリがなさそうだから・・・この辺で止めとこう・・・。
ほら―――二人とも仲直りして・・・今日は引き上げるよ。
ラ:ええっ―――わ・・・私たちの所為で、破談になってしまったのですか??
マ:そ―――それは・・・すみませんでした。
女:(ニコ)いや―――いいんだよ。
これも“今日のところは”・・・ってところなのだから。
ラ:えっ―――それでは・・・!
女:うん―――この城の持ち主の方も、何かと忙しそうな人みたいだったからね。
また今度じっくりと膝を交し合いつつ、渉外にのったほうが云いとおもうんだ。
マ:・・・でも―――“入植”の件、受け入れてもらえるんでしようか・・・
女:それは―――まだ先の話だね。
これからじっくりと時間を費やしていきたいと思うよ。
〔次にブリジットが対話した相手こそ、“渦中の人”であった女禍だったのです。
それにどうやら、女禍がラゼッタやマグラを連れ立ってここにきていた―――と、いうのも、
自分たちの活動の拠点となるべき場所を見定めるため、真っ先に目星をつけたのが、ブリジットの所持するこのトロイメア城だったわけなのです。
それが―――連絡を取り合っている最中(さなか)の、それもすぐ近くで、ラゼッタとマグラが口喧嘩を初め、
次いで自分も、つい怒鳴り声を上げてしまった―――そのことを、向こう側になんと取られたかは、
向こう側から交信を断ってしまったことからも判るように・・・
つまり―――それゆえに、当初から予測していたよりかは、時間を費やさなければならないとも思っていたのです。〕