≪六節;城下町でのやり取り≫
〔それから―――彼女達は、帰途へとつくため、近くの町へと下りていき・・・
すると、前方から一台の車が、ものすごいスピードで通過したのです―――〕
フオぉぉ――――ン・・・
マ:(危ないなぁ―――・・・人通りが少ないからいいようなものの、あんなにトばすだなんて・・・)
ラ:―――どうしたの?
マ:え? ああ・・・いや、今の車さぁ、なにを急いでいたのかは知らないけれど、
あんなにスピードを出す事はないだろう・・・と、思ってさ。
ラ:フゥ〜〜ン・・・あら、まあ―――なんて可愛い・・・それに、いい匂い―――
女:どれ・・・(ふぅ〜ン) これはどうやら、この惑星の食べ物の一つで、『パン』というようだね。
ラ:・・・『パン』?
女:うん―――調べてみたところによると、主原料は小麦粉で、またそれらにイーストという材料を加えたりして発酵させたものを、
程なく加熱して焼き上げたものをそういうらしい。
一つためしに購入して食べてみるかい?
ラ:はいっ―――
マ:全く・・・食いしん坊だなァ、ラゼッタは。
ラ:マぁ〜グぅ〜ラぁ゛〜!#
マ:――――はいはい・・・
〔突如として自分たちの目の前を通り過ぎていった車を訝しみながらも、
ラゼッタからの提案により、近くのパン屋に立ち寄った女禍たち。
それでもやはり―――気になるのは、今、ものすごいスピードで、この地に来た車なのですが・・・
その車に乗車していた女性は、この町にある風光明媚な城の正門の前に着くなり―――〕
ブ:―――守衛!ちょっと待って・・・
守:あ・・・これはブリジットお嬢様!!
ブ:(はぁ――はぁ――)こ・・・この城を購入したいと願い出ているお客人は・・・
守:――――ああ、その方でしたら今しがた・・・
ブ:―――帰ったというのか・・・一足遅かったか。
守:あ・・・あの〜〜―――
ブ:・・・いや、いい―――それより、そのお客人はどんな格好をしていた。
守:・・・はあ―――ゆったりとして、動きやすそうなブラウスに、パンタロン―――
色は・・・そうですね、薄い紫のようでした。
それから、頭に幅広の帽子を頂いて―――目にはサングラスを・・・とても人当たりの良いご婦人でしたよ。
ブ:(婦人―――)・・・そうか、そのほかに特徴は―――
守:他に・・・? ああ―――そういえば確か、男女お一人づつお子様がおりましたですね。
でも・・・その方の子供さんのようには見えませんでしたなぁ・・・。
その―――お子様がですね? 二人ともなんやかんやで言い合いになっておりまして・・・
ブ:(それだ―――!!)判った、ありがとう・・・。
(それに・・・“今しがた”ということは、まだこの城の近くに・・・では町か?!!)
セバスチャン―――今度は町に下りてみるぞ・・・。
〔この城の守衛をしている者が、今まさに門を閉めようとしていたとき、このトロイメア城の持ち主であるブリジットが滑りこんできたのです。
そう・・・自分が持っているこの城を購入しようとしている人物が、丁度そこに来ていることを知り、
ならば折角近くまで来たのだから、当人同士で話をつけよう―――そう思って急行したのだけれど、
惜しいかな、一足違いだったことを残念がるブリジット―――・・・
ですが、ここで一縷の望みを託し、町のほうに下りてみようとしたのです。〕