≪二節;ユミエの疑問≫
〔ともあれ、今は各自が最低限必要な装備・・・
防寒と断熱を兼ね備えた全身のスーツに、4日分の食料と水―――そして酸素を詰めたボンベ(150cc)を二本・・・
それが今回のヴァーナム攻略に、必要最低限と考えられた装備一式だったのです。
ところが、この分量をキリエから聞かされた時、最初に異論を唱えたのは意外にも・・・〕
ユ:・・・あの、すみません―――
キリエさんが私達に用意するように云われた装備に関して、4日分では・・・
キ:「少ない」―――と、思えたでしょうね・・・。
けれどあなた達には使命があるはず―――急拵えとは云えど、一週間を掛けて訓練してきたんだもの・・・少なくとも私の速度には順応できるはずよ。
〔自分達が・・・最初にヴァーナムを越えてきたのは、いくら不案内だとは云えど一カ月を要してきた・・・
けれど今回キリエが計画していたのは、その期間の1/4にも満たない期間であったため、ユミエはすぐにある種の不安を抱えてしまうのでした。
確かに―――祖国危急の事情は判ってはいましたが、自分達がまた再び「魔の山脈」と畏れられている山々を克服しようとした時、
優れた指導者の下で高山の知識を取り入れることが出来た・・・
これならば、多少の無理は効くかもしれない―――そこは誰しもが錯覚に陥りやすい処ではあったのです。
しかしそこをユミエは―――・・・
彼女も、いかばかりかの知識を得たがために、短く期限を切ったキリエのこの判断に、不安を抱かざるを得なかった・・・
それにしても早い―――いや、短い・・・
いくら自分達がその道の熟練者に扱(しご)かれたとはしても、これでは少し・・・いや―――随分と無茶を押し通しているのではないか・・・
けれども、キリエが提案したこの日時に対し、他の者たちは喜ぶばかり・・・
確かに、ユミエ自身も早ければ早いに越したことはないという思いも、あるにはあったのですが・・・
逆に云えば、今回取り入れた高山の知識が、そんな期待を軽くふき飛ばしてもいたのです。
そう・・・今回の訓練は、高所・高山に身体を順応させると云うことの他に、
あの当時の自分達では知り得ることのできなかった、高所・高山の危険性と云うモノをキリエは教えようとしていたのではないか・・・
今となってはユミエはそうとしか感じられなかったのです。〕