≪三節;越山序盤≫
〔そう思いつつも一日目―――・・・
キリエを始めとする「ヴァーナム越山隊」は、当初のキリエの計画通り7000m付近でビバークをしていました。
しかしここまででの途中、体調の不調を訴える者は一人として出なかったのです。
自分達の国「マグレヴ」からガルバディア大陸に着くまでの行程・・・
最初にルリ達がヴァーナムへと入山した際、隊員の半数以上が前日・・・或いは直近に食べていたモノを吐き出してしまった。
これが後に知ることとなる「急性高山病」―――・・・
ろくに身体造りや訓練もせず、いきなり今回と同じ標高に達した時・・・常人ならばどうなっていたか―――それを彼女達自身で実体験したのです。
でも、前述したように、今回に限ってはそんな症状に見舞われた者は一人としていなかったのです。
そのことに、ユミエ自身にも淡いながらも期待感が芽生え始めました。
そして同時にこう思い始めたモノだったのです。〕
ユ:(もしかするとこの人は・・・私が思っていたような、多少の無理は承知の上なのかもしれない。
だとしたら今、私達がしなければいけないこと―――この人を信用する以外に生き残る途(みち)はないのね。)
〔ユミエが期待した処とは、或る意味ルリ達と似通っていました。
キリエを信用する―――と、云うことは、自分達の生命を彼女に預けるに等しい行為・・・
それでもこの行為が妥当だと感じたのは、キリエがこんなにも危険極まりない場所を、その豊富な経験と知識によって、
自分達に最善だと思われるルート選択をしてくれていた・・・
まださらに云うなれば、自分達を少しでも死の危険から遠ざけてくれていた―――そう思わざるを得なかったのです。
明けて二日目―――・・・
ゾハル山での訓練や、最初に―――自分達がマグレヴ側からヴァーナム山脈を越えようとしていた時には、眠ることさえ儘なりませんでしたが・・・
訓練によって鍛えられたこともあってか、充分な睡眠を採ることが出来た今回に限っては、彼女達は清々しい朝を向かえていたのです。〕
マ:ぷひゃぁ〜よく寝た♪
そ〜れにしてもいい天気だ〜〜♪ 今日はどこまで行くのかにゃ。
ユ:全くお前は・・・少しは緊張感を持ちなさい。
レ:それにしても―――よく眠れたから、気分は幾分か楽ですね。
シ:ええ・・・あの時は、例え初日でも眠れもせず、知らずの内に体力の限界まで追い詰めてしまいましたからね。
それも・・・自分自身で―――
ナ:ルリ・・・大丈夫か。
ル:ええ・・・これしきのことで挫けてなるものですか。
アヱカ様は絶体絶命の苦境から立ち直り、宿敵カルマを討ち果たすことが出来た・・・
私も、お父様やお母様の仇を討つためにも、生きて祖国の地を踏まなければならないのです。
キ:皆―――揃っているわね、それでは出発しましょう。