<第十二章;陽の没する処の国>
≪一節;祖国の現状≫
〔祖国でも「魔の山脈」・・・入れば必ずや誰かが死ぬとさえ伝えられた死の山脈を、
今回は逆の方向―――ガルバディア大陸から、しかも一人の犠牲も出さずに踏破した者達は・・・〕
レ:ああ―――・・・わ、私達の故国が・・・
シ:き・・・奇蹟です―――また生きて、この地を踏めるとは・・・!
ナ:ルリ―――ルリ姫・・・ようやく私たちは、本来の目的を遂げることが出来るんだよ。
ル:でも・・・もう・・・この国には私達を知る者はいない。
父さまも―――母さまも―――そして大臣たちも・・・周辺の蛮族達に・・・
マ:でも、あたし達が帰ってきたんだからさ。
死んだ人たちの無念―――晴らしてやろ〜ぜいっ!
ユ:(また・・・戻ってきたけれど、果たしてこの選択は正しかったのだろうか。)
〔行きも地獄だったけれど、戻りもまた地獄でした。
けれど、行きのように犠牲が出なかったのは、高山のことを熟知していた者のお陰があったことを、ルリ以下の五名は感じていました。
ここは―――通称を「魔の山脈」と畏れられたヴァーナム山脈を抜け、さらに南西へ下ること30里の地点にある・・・「マグレヴ」と云う国家。
それが・・・今では、以前のお話にもあったように、この国家を治めていた「王」と「妃」は敵の手にかかり、辛うじてその親族がこの国の形跡を保っていたのが現状だったのです。
そして彼女達が、かつて繁栄した王国の名残に足を踏み入れると―――・・・〕
ル:(!)あ・・・あ・あ―――そんな・・・王宮が!! 跡形もなく・・・
〔あれだけ繁栄していた国の象徴であった王宮は跡形もなく、総てが敵国に蹂躙し尽くされた後だったのです。
絢爛豪華な彫像も―――大理石の柱も・・・百草で彩られた庭園も・・・その過去の在りし日の影を、見るに偲(しの)びなかったのです。〕