≪二節;或る者の影≫
〔すると、この惨状を目の当たりにしたキリエは、すぐに何かを感じ取ったのです。
「この蹂躙のなし様は、尋常ではない・・・」そしてさらには、「もしかすると、この地にも人間ではない兵を操る者がいるのではないか」・・・と。
そしてそれは、すぐに象(かたち)となって現れたのです。〕
獣:―――ン・ヌホッ? だ〜れだ、そこにいるのは・・・
獣:・・・このにほひ―――人間だ〜!
レ:ああっ・・・あれは、獣人(ライカン・スロープ)!
シ:くっ・・・まだこの辺りを嗅ぎまわっていたとは!
ユ:ナオミ・・・ルリを確保―――離れずに守って、それがあなたに課せられた使命・・・。
ナ:判っているって―――
ユ:―――マキ、私たち二人で迎撃に当たるわよ!
この私達を見た者を・・・生かして帰すわけにはいかない!
マ:が〜ってんしょーちのすけぃ☆
獣:ウホウホ・・・あの顔―――見たことあるぞぅ。
獣:ああ・・・確か、この前殺ちた王族の哀れな表情と、全くよく似てやがる。
獣:なるほどぉ〜〜するってことは、あの時行方不明だとされた―――・・・
〔まだ蹂躙し足りない―――と、云った具合に、数人の獣人が目を血走らせながら、まだ廃墟と化した王宮周辺を嗅ぎまわっていたのです。
するとそんな時に目聡くルリ達を見つけ、しかもルリの顔を見るなり、先頃殺したばかりの王と王妃に似た顔だ・・・と、云ったのです。
そのことに一層表情を強張らせるルリ・・・
しかし―――今は信頼できる同士達が、素早く陣形を組み立てて、ルリを護る者・敵の駆逐に当たる者に分かれたのです。
ですがこの時・・・そんな彼女達の誰よりも怒り心頭になっていた者がいたことなど―――
彼女達・・・更には獣人達も知る由もなかった―――
そして今・・・その者の腕(かいな)は、ユミエやマキが先駆けるよりも早く、獣人の一人の頭蓋を鷲掴みにしていたのです。〕
獣:あ゛がっ?? あ゛い゛い゛・・・い゛ぎゃあ〜〜!!
い〜い゛〜い゛〜―――痛゛い痛゛い〜〜は、離せ〜〜このヤロ!
キ:・・・・・・・。
獣:あ゛っ―――い・・・いえ、間違えまじだ。
は、離してくだざい゛〜〜!
キ:・・・どう―――甚振(いたぶ)られる感想は、非常に心地がいいでしょう。
獣:だっ―――誰がいいもんかい! さっさと離しやが〜〜ぺぷちっ!
キ:・・・フン―――自分がその立場だと、泣いて命を乞う・・・か、つくづく虫唾を奔らせてくれる・・・。
ユ:―――っっ・・・左将軍!
それに・・・フィールドの急激な温度低下―――!
シ:くっ・・・間に合う―――?
「我は求める・・・絶大なる神の御加護を」―――!!
キ:・・・フッ―――安心なさい、力はなるべく抑えておいてあげるわ。
ここにいるこいつらの誰かに、敵の規模と強さを教えてもらうために・・・ね。
〔そう云うなり―――蒼龍はフィールド上を先駆けると、当然の如く「凍結の奥義」に抗えなかった者達の氷柱が出来上がっていたのでした。
その内でも・・・運悪く、中途半端に耐久力が高くて生き延びた者を探すのは、さしたる苦労もなく―――
今、左将軍キリエの足下に跪かされた者がいたのです。〕
キ:さて・・・話してもらいましょうか。
あなたが所属している勢力―――と、その規模を。
獣:・・・フフン―――見たところ、こんな力を発揮できるのは貴様だけのようだなぁ・・・。
残念だが、貴様一人でオレ達がどうにかなるモノだとは思わん方がいいぞ・・・。
それに、もうこの国―――マグレヴは、猫の額ほどの所領も有していやぁしねえ。
あとに生き残っている奴らのいる処を突き止め、その殲滅を図る為にオレ達が遣わされたのさ。
第一、オレ達のバックには、貴様を片手で捻る猛者がわんさといるんだ・・・
グハハハ―――どうだ、怖気づいたか! 今更許してくれとぉ〜〜えぶしっ!
キ:―――泣いて赦しを乞うたところで、もう手遅れ・・・
そのことは、そっくりそのままお前達を裏で操ってる者達に返してあげるわ。
〔やはり・・・存在していた―――
人外の能力を発揮し、下級魔族や獣人達を操る何者かを・・・
でも、実際どの程度の能力を有しているのか、直接会ったことすらなかったので判ろうはずもなく、
けれど、その条件の下では向こう側も同じこと―――なにもこちら側だけが畏れることはない・・・そう云う結論に辿り着いたのです。〕