<第十三章;次の闘争のために・・・>
≪一節;不調の展開≫
〔魔の山脈を越え―――目的地に無事に着いたことを、ルリを筆頭とするマグレブの民を引率していた娘・キリエより、一報を受けたヱリヤでしたが・・・
また同時に、その国家を滅亡手前までに追い込んだ勢力の内に、過去・・・自分と袂を別った兄弟らしき存在もいることを知り、いつになく憤っていたのでした。
今も、女皇・丞相・大将軍が居並ぶ玉座の間にて、自分の主義主張とする処の正当性を説いているのですが―――・・・〕
ヱ:丞相―――こんなにも私が頼みこんでも、願いは聞き届けられないと申されるか・・・!
タ:いかにも・・・ヱリヤ様、今のあなた様は一時(いっとき)の感情にまかせて―――
ヱ:一時(いっとき)の感情にまかせて何が悪い!
あいつは・・・我が弟のゾズマは、私達のやり方が手ぬるいと批判したばかりではなく、
無謀にもビューネイの軍に突撃し、玉砕をした―――・・・
いや・・・それで亡くなっていたのならば、まだ「英雄譚」で済ませられていたものを・・・
それを―――恥を知らずらに、ガルバディアとは別の処(ちいき)へと逃げ延びてのうのうと生きていた・・・
しかも弱き者達を弄(なぶ)るだと―――? 結局あいつのしている処とは、私達に対してのアンチテーゼにすぎないのだ!!
〔ヱリヤは赦せませんでした・・・。
4万5千5百年前に、当時の自分達の方針を批判し、主が止めるのも聞かずに・・・無謀にも魔将筆頭が治める所領を侵犯し、
彼が率いていた一軍を全滅させるという失態を演じてしまった・・・
それが、この度の娘からの報告により、その者はあの当時討ち死にしてはおらず―――命辛々(いのちからがら)逃げ延び、
自分達がいるシャクラディアにそのまま戻るのを恥じたのか、まだその当時は未開であるとされた例の地域に逃げ込んでいたのです。
しかも・・・現在では、その者が加担しているのは―――弱き者達を弄る性質を持ち合わせる・・・
詰まる処、あのカルマを彷彿とさせる勢力であることを知り、ヱリヤは怒りの炎を激しくしてさえいたのです。〕