≪七節;「戯れ」未満≫

 

魔:あろぉ―――ぺいっ!!

 

 

〔そこにいた・・・獣人の一人が、なぜかいきなり絶息した―――

しかも、奇妙なことに・・・今、急に絶息した仲間の遺体には―――〕

 

 

魔:うおっ―――なんだこいつ・・・いきなり死にやがったぞ??

魔:おい―――それよりこれを見てみろ・・・こいつに付いている傷痕・・・

魔:うっぐ・・・こいつ―――あの野郎に付けた傷の深さ、位置共に・・・同じ??

 

魔:ど―――どうなってん・・・ん〜ん゛ん゛〜〜ろ゛ごあ゛っ゛!

 

 

〔そこにいる―――誰が知ろうか・・・

既に・・・大公爵のフィールドに、足を踏み入れた時点で―――彼ら全員が、或る洗礼を受けていたことなど・・・

 

それこそが―――・・・〕

 

 

大:フッ・・・フ・フ・フ―――いかが・・・だったかな、余の「戯れ」は・・・お気に召してくれると幸いなのだが・・・。

  しかし、一つ勘違いをしてくれて困るのは、今死に絶えた者に付いた傷は、総て汝達が余に負わせたものなのだ。

  この胸の傷も―――馘の傷も―――肚の傷も―――・・・

  余の「満足」には程遠いモノだったが、あの者達が来るまでの退屈凌ぎにはなった―――そのことに限っては、感謝を申し述べておくことにしよう・・・

 

  さあ―――汝達が来た時と同じように、仲良く全員で涅槃へと旅立ちたまえ・・・!

――=裏面伍佰陸拾肆式;ワード・オブ・ペイン=――

 

 

〔大公爵は・・・何かを感じていました。

(じき)ここにも、敵に抗えるだけの兵力・戦力が備わり、また・・・自分が退屈する日々か来るのだ―――と。

 

もう、あんな日々が来るのはご免被りたい―――

いつになったら、自分の不満は解消されてくるのか―――

 

仕方がない、ここは「戯れ」にでも欲求を満たしておかなければ、またあの時と同じように味方相手に闘争を繰り広げてしまいそうだ・・・

 

 

「最強」の座に就いてしまうのも考えもの―――

強きの頂点に立ってしまえば、自分に挑戦してくる者が後を絶たないモノと、そうとばかり思っていたのに―――・・・

それが・・・1000年を越えた頃から、皆が畏れをなしてしまい―――やがては自分に挑戦をしてくる者などいなくなってしまった・・・。

 

 

それでも・・・スターシア―――汝か生きていた頃は、譬え一人だとしても余は嬉しかったのだ・・・

余が・・・手加減をせずとも、壊れずにいてくれたのだから―――・・・

 

だが・・・スターシア―――汝が死んで、それからの日々は・・・まさに余にとっての地獄そのものだった・・・

無意識のうちに強き者を求めてしまうこの性分―――

余の・・・この苦しみを・・・既にあの世に旅立った汝に判るはずもあるまい―――

 

余は・・・今の自分が・・・狂おしい―――

 

 

大公爵の苦悩とは、「最強」と云う名の頂点に着いてしまった者の苦しみと云えました。

当初は、その頂点にあることで、自分目当てに腕試しを試みる者が多く輩出したものの、

まだそれに「無敵」まで冠してくれば、次第にその数は減っていき・・・終(つい)には、それ自体の数が無くなってしまったのです。

 

そしてようやく、「これでは」―――と、思い始め、当時同じ勢力に所属していた「龍皇・スターシア」も同じ境遇にあることを知ると、

早速、彼の者と意見交換などをして、「演習」(スパーリング)と称して拳を交らせたりなどしたのです。

 

けれど・・・なまじ―――不死・不滅に近い身体ゆえに、寿命の限られた種族とはまた別の刻の刻み方をした・・・

良き仲間達は、次々と生命の刻を紡ぐるを終え―――そしてまた・・・自分一人だけが残ってしまった・・・

 

そんな惨めな自分を慰める為か―――仲間達の子々孫々が、口々に自分の栄誉を讃える・・

 

 

汝達に何が判るのか―――・・・

何の苦労の一つも知らいで―――今の平和を享受する者達が・・・

余や、ラゼッタの辛苦の・・・何が判ると云うのだ―――!!

 

 

大公爵は・・・エルムドアは、そこで手当たり次第に暴虐を働きました―――

それは当然の如く、上層部の方々の耳にも入るところとなり、宜しく組織からも追われてしまい―――剩(あまつさえ)、監視付きの幽閉を奨励されてしまったのです。

 

余談として・・・この当時、エルムはエルムドアの娘になったばかりであり、自分の父親となった人物が罪人だとは思えなかったため、周囲からは浮いてしまったものでしたが・・・

時を経て行くに従い、そう云った物事の経緯の真実を知り得て行くのは、極自然な成り行きだと云えたことでしょう。

 

それでも彼女が孤立化をせず、ゆくゆくは皇・女禍の側を固める片翼の一つに成り得たのも、

そこの処の事情をよく知っていた女禍やヱリヤのフォローがあったから・・・なのではないでしょうか。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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