≪二節;確信に変わる疑問≫
〔それはそれとして、隠れ里も同然の場所を仮王宮と定めたマグレヴは、新女王ルリの下、まづ初めにやらなければならない方針を決め・・・〕
ル:それにしても大臣、あなた達の一族だけとは云え、生き残ってくれたことに大変感謝しているところです。
無念にも父や母の存命中に戻れなかったことは、只一つの心残りですが・・・
あなた達が断腸の想いで私達を送り出した成果―――あの山脈の向こう側にあると云う「エルドラド」・・・私達の希望を叶えてくれる理想郷が見つかったのです。
〔『感無量』・・・偏(ひとえ)に大臣の代弁をするなら、その一言に尽きたことでしょう。
我が儘・・・且つお転婆で、自分達の手を煩わせていたばかりのあの姫が・・・
よくぞここまで成長した―――立派になったものだ・・・と、感激しきりだったのです。
そして今は斜陽のこの国を、支援してくれる大国家の使者を伴って帰ってきてくれたことで、最早手放しで喜んでいた感じすらあったのです。
ところが―――・・・〕
キ:慶(よろこ)んでいる処を大変申し訳なく思うのですが・・・現在この国家を支配下に置こうとしている者達とは、一体どんな勢力なのでしょうか。
ス:うむ・・・そのことについては―――テツロー、教えてあげなさい。
テ:(テツロー;大臣の一族であり、主に軍務関係を担当していた。)
・・・・。
ス:(うん?)おいテツロー・・・どうしたと云うんだ―――
テ:・・・ここはオレ達の国だ―――他所者から手を貸してもらわなくても、護り抜いて見せる!!
キ:(なるほど・・・これは・・・)そんな強がりを云うけれど―――結局の処は護り切れていないじゃない。
では訊くけれど・・・そのあなたがいながら、なぜルリさんの父上や母上が敵の手にかかったの?
この国が・・・こんなに―――隠れるまでに落ちぶれてしまったのはどうしてなの?
当面の問題から目を背(そむ)け、理想だけを語るのは所詮無頼のすることよ。
〔やはり、どこの集団にも頑固な跳ねっ返りと云うモノはいるもので、マグレヴに協力してくれる者達のことを大臣から云われたとしても、頑なに拒む存在がいたのです。
その者の一言は・・・よく云えば高潔なモノのように聞こえるのですが―――
そこで述べられたその者自身の矜持と現実との落差が激しかったため、さすがのキリエもそこでは苦言を呈するしか他はなかったのです。
けれど・・・キリエは、彼の言い分が痛すぎるほど判っていたのです。
斯く云うキリエも・・・実力に伴わない理想を述べていた時期があったのだから―――
だから・・・なのかもしれません、そこでキリエは、そんな彼がただの理想家にならないように―――・・・〕
ル:え・・・っ、キリエさんが直接お相手を―――?
キ:そう云うことです・・・そこの彼の言い分が、口から出任せではないことを証明させるただ一つの手立てとして、この私と・・・直接手を合わせる―――・・・
ス:う・・・お、お・・・そ、その姿は―――
テ:奴らの・・・仲間の一人―――
キ:さあ―――来なさい、己の武技の極みを持って!
〔大言壮語した者の武がどれだけのモノかを測る為、キリエは蒼龍の鎧に身を包みました。
ガルバディア大陸がパライソの名の下に一つとなってからは、再びこの姿になるものとは思ってもいませんでしたが・・・
けれどやはり、今のキリエの姿を見るなり、マグレヴの者達は動揺を見せました。
「見たことがある」―――他とは違う、機能性にも優れたその鎧に身を固めた者のことを・・・
そして、感情に任せてキリエの真正面から向かって行った者の口からは―――〕
テ:くそぉ・・・畜生〜〜畜生〜〜!!
お前が・・・お前さえいなければ―――コウジも、ケンイチも、クミも死なずに済んだんだ〜〜!!
レ:コウジも―――
マ:ケンちゃんも―――
ユ:クミも・・・
テ:死ねぇ・・・マルドゥクのゾズマ―――!!
キ:・・・・。