≪二節;女皇の不安≫
〔一方その頃・・・ガルバディア大陸―――パライソ皇城・シャクラディアでは、旧ラージャ国のある地域にて作業をしていた者が帰還し・・・〕
ア:どうやら彼の国へと通づる路―――完成しましたようですね。
デ:ええ・・・取り敢えずは―――それでお姉さまも、直後にあの子たちの敵対国に向かっちゃったけど・・・良かったの?これで―――
〔現在ではシホと云う存在に転化しているガラティアが、マルドゥクを代表する将官の前である交渉を行っていた―――
そうなっていたことの理由に、以前から設置を進めていた「門」<ゲート>と呼ばれる転送施設が完成していたからなのでした。
その報告を、施設を設置させる為の陣頭指揮を執っていたジィルガより聞き、次なる予定に進もうとするのですが・・・〕
ア:・・・・。
デ:―――どうしたと云うのよ、随分と浮かない顔をして・・・
ア:単なる気の所為・・・と、したかったところなのですが―――どうやらわたくしが不安としていた処が、現実のモノとなろうとしているようです・・・。
デ:どう云うことなのよ―――何を云っているの?
ア:ジル・・・あなたは、先頃のわたくしの発言を覚えていますね。
デ:ええ・・・確か―――あんたに連なり関わり合った何か・・・
ア:―――やはりここは、わたくし自身があちらへと赴き、確認をしなければならないことのようです。
それに・・・先に向かわせたジョカリーヌのことも気がかりです・・・。
ジィルガ=エスペラント=デルフィーネ―――あなたには今一度「丞相」に復職してもらうに伴い、
タケルさん婀娜那さんを罷免、これよりわたくしの護衛といたします。
〔滅多と発せられることのないアヱカの強権発動―――今まで国家発展の中心となり、共に苦楽を分かち合った忠臣二人をいきなり罷免・・・
また、策略上そうしていたとはいえ、敵対していた「黒き宰相」を、その時点をもって再び「丞相」に就任させた―――・・・
こんなことは、あとあと反発を招く材料にならないとも限らない・・・そのことを知っているのだろうに―――
それでもアヱカは、そうするしかないことを判っているようなのでした。
それが・・・彼女自身のみが抱いていた、或る云い知れない不安―――
その不安の正体も、時が経つにつれ、判ってもきていたのです。
遥けき過去に敗れ―――この惑星の衛星の裏側に轟沈した艦・・・
元は自分が所有していた艦でしたが、沈められた衝撃で艦の機能は完全に失われ・・・ですがしかし―――
或る者の温情のお陰で、この時代一杯を紡げられる「生」の長さ分のエナジーは残されていた・・・
けれどここ数年―――そのエナジーの消耗の仕方が予定より早まっていることに、アヱカは憂慮し始めていたのです。
その原因を・・・アヱカは当初、カルマとの決戦に際して―――と、云うことに、自分を言い聞かせていました。
それでも、何か違う感じがしていた―――・・・
そこでアヱカは、或る仮説を立ててみるのでした。
―――まさか・・・「あれ」が・・・?
その事実は、恐らくは自分とあと一人しか知らない・・・
しかもその「あと一人」は、自分の意向を受けてマグレヴの敵対国―――マルドゥクへと潜入をしている・・・。
恐らくは、この世に起こる総ての事象を知り得ている人物だからこそ、自分からの無茶とも思える要請に応えてくれたのかもしれない―――・・・
でも、その今となっては、「無茶」の何物でもなかった・・・
アヱカは嘗てない危機感と焦燥感に煽られ、強権の発動を行ったのでした。〕