≪三節;迎えに来た者≫
〔そのまた一方で―――母である女皇アヱカより、先行してルリ達の故国マグレヴの復興支援をするように云い使った皇女ジョカリーヌは、
護衛に右将軍であるサヤを供につれて、ランド・マーヴルに来ていました。〕
ジ:マグレヴかぁ・・・一体どんな処なのか、想像しただけでもワクワクしてくるね。
サ:・・・とは云え、焔帝様だけかと思っていたら公爵サマまでもいなくなってたなんて―――
ジ:そう云えば、あの子達は昔から二人一組(ツーマンセル)だったからね・・・仕方がないと云えばそうなんだろうけど―――
サ:そ〜んなことより・・・五画ほど前に連絡入れといたはずなんだけどなぁ〜〜
どぉ〜して迎えの一人もよこさないんでしょうかねぇ。
〔未だ見ぬ地域への期待に胸ふくらませ、心躍る皇女ジョカリーヌ・・・
実はこの存在は、物質界(マテリアル・プレーン)に留まる為、新たに魂の受け皿―――器としての肉体を得た、
女禍=ユピテール=アルダーナリシュヴァアラ・・・だったのです。
しかし、周囲からの得心を得る為には、「名前」と云う存在の証しを立てなければいけないため、
また・・・都合よく「女皇懐妊」の報も流れたことから、アヱカの一人娘として―――
ジョカリーヌ=サガルマータ=ガラドリエル・・・と、云う名前で、この世に存在しているのです。
それはそれとして―――・・・如何にせよ、この地は初めてで地理的にも不案内であり、
果たして当該国であるマグレヴに、ちゃんと向かっているかどうかも怪しかったので、
ランド・マーヴルに入った時点でサヤが、先行して戻っている者達がそろそろ迎えに来てもいいはずだ―――と、思っていた処、
なんと、迎えに来ていたのは―――・・・〕
サ:ン・ゲッ―――じじい?!
ジ:―――大公爵・・・
大:ふぅむ・・・やはり、思った通りだ―――余の退屈を紛らわせるのも、これまでのようだ・・・な。
ジ:大公爵? まさかお前―――・・・
大:さて・・・な、だがヱリヤや余の娘まで来ている上、汝らまで来てしまうとなると、ますます余のいる余地が無くなると云ったものだ。
ここは大人しくシャクラディアへと戻り、また懊悩とした日々を送るしかないようだよ。
〔自分を養ってくれた人物―――エルムと容姿を同じくする、別の誰か・・・
その「別の誰か」を特定させるのに、サヤに迷う時間などありませんでした。
自分を養ってくれた人物の父―――『大公爵』・・・
そんな強き者が既にこちら側へと来ており、しかも何かをやらかした後であった―――と、云うのが判ったのは、
大公爵なる人物の証言にも裏打ちされていたことでもあり、また表情からも読みとれたことだったからなのかもしれません。
それに・・・大公爵は、自分に准ずる強き者達がこの地へと流れてくるのを感じていたものと見え、
この時点でマグレヴより引き上げ、またパライソにて憂悶とした時間を過ごすことの侘しさを漏らしてもいたのです。
そのことを聞いたジョカリーヌは―――・・・〕
ジ:マグラ・・・お前には、長年苦労を掛けたにも拘らず、未だお礼の一つもしていなかったね。
けれどもう少し・・・もう少しだけ待ってくれるなら、今までの分に利子を加えて、お礼とすることを私は考えているんだよ。
大:フフ・・・その言葉が汝の真実ならば―――過分なる期待はしないまでも、待つ価値はありそうだ。
なに・・・「待つ」と云う行為自体には慣れっこになっているものでね。
サ:じじい・・・
大:フッ―――サヤよ・・・余りエルムの手を焼かせるのではないぞ。
〔皇女ジョカリーヌ―――いえ、女禍は知っているのでした。
大公爵なる人物が、その昔から・・・自分達が推進させているある事業の支援をしていることを。
時には・・・歓喜に沸き、哀しみに涕し、怒りに打ち奮え―――苦楽を共にした日々・・・
それがいつの頃からか、次第に歯車が噛み合わなくなり、まるで追い出すようにして組織から放逐してしまった・・・
あの時の・・・怨めしそうな彼の表情を―――私は今でも忘れられない・・・
そこにあった事実は、遥か昔―――「皇国」ではない・・・ある一つの組織で武闘派の頂点に君臨し、
そこで敵対していたある勢力と、その組織との板挟みに苦悩した者の過去なのでした。
それでも大公爵は、過去の総てを清算し、ジョカリーヌからの申し出を快諾―――
そのことにジョカリーヌは、感謝の意を表していたのです。〕