<第十六章;ファースト・コンタクト>
≪一節;挨(あい)の間≫
〔その瞬間―――ヱニグマは、女禍の最大顕現「乾坤極絶光弾」(ワイトー・クルスト)を受け、やがては存在の終(つい)を迎えていました。
そして女禍も、自分達と敵対をしていた勢力の首領を倒したと感じた後は、自分達の闘争によって壊されてしまったこの惑星を修復するべく、
自らの艦であるシャンバラへと戻ったのでした。
実はその後―――・・・挨(あい)(100億分の1)の刻の間(はざま)に、或る者の助けを借り・・・
思い残していた胸の内を述べるヱニグマの姿があったのです。〕
ガ:―――私を呼び出したのはお前かい・・・
ヱ:プロフェッサー・・・今回ばかりは、わたくしの敗けです・・・。
それにしても、あの方は一体何者・・・
このわたくしと同じ―――いえ、それ以上の「闇」を抱えながらも、このわたくしでさえも包み込もうとする慈愛・・・
いつの間にか、わたくしはあなたの妹君に惹かれていたのです・・・。
〔これから・・・宇宙の闇に消え逝かんとするヱニグマの前に現れたのは、
自らの身を「時限の狭間」へと貶(おとし)め、半ば監禁状態にあるガラティアでした。
しかし・・・その場所は、入るのも―――また出るのも、そう簡単ではないのに・・・
だとしたら、その空間に現れていたガラティアはどんな存在なのか・・・疑問が湧いてくるのですが、
端的に述べると、その空間に現れていたのは・・・ガラティアの精神体(アストラル・バディ)―――だったのです。
そんな・・・自分と最も敵対していた組織の司令官クラスに―――
ヱニグマは、どんな胸の内を打ち明けたと云うのでしょうか。〕
ヱ:いつものわたくしの手の内では・・・狙った組織の誰かを魅了し、走狗になり果てさせていたものでしたが・・・
あの方に関しては、わたくしのいつもの手口は通用しなかった―――
それどころか・・・気がついたときには、わたくしがあなた方の妹君に魅了されていたのです・・・。
思えば・・・そう感じた時―――その時点で、わたくしの敗けは決定されていたのかもしれません・・・。
そして・・・わたくしは敗れ・・・このまま宇宙の闇へと消え逝く存在―――
その前に、知っておきたいのです・・・あなた方の妹君と、このわたくしの関係を。