<第十七章;新たなる真祖>
≪一節;憂慮≫
〔「純然たる白」ではない―――「白濁」とした、不確か且つ不敵な存在の出現によって、少しばかり混乱に陥ってしまいましたが、
遙けき過去よりの因縁を持ち合わせる者達は、表面的・・・直接的ではない部分で激しく火花を散らし合っていました。
けれど、プルミエールはその時を時期ではないと見込んだのか、小競り合いを起こすことなく撤退をし、
一時的ながら混乱は収められたかのように思われたのですが―――・・・
かえって残されてしまった問題は多くなってしまい、どれから解決していくかが今後の課題となったのでした。〕
ア:これはこれは―――わたくしが想定していた以上に、皆様方には疑問がおありだったようですね。
ジ:アヱカ・・・大した余裕だけど、これら総てをどうやって解決するつもりだったんだ。
ア:わたくしは・・・総ての疑問にお答えするつもりはございません。
少なくとも・・・「今は」―――ですが・・・。
それよりもまづ、一番疑問にされているわたくしの「真実」―――なのですが・・・
これは先程からなされていた、「遙けき過去」をよく知る方達の証言からも判ることでしょう。
ですが・・・それは、「遙けき過去」において一度滅んでしまったモノでありまして、今現在のわたくしは「ヱニグマの魂の欠片を所有する者」・・・と、なるのです。
そこで―――第二の疑問となるわけなのですが・・・
あの者・・・「プルミエール」なる者は、わたくしの元々の存在「ヱニグマ」を後世に遺そうとした結果―――つまりは「ヱニグマの分身」でもあるのです。
〔当面の自分達の敵となる存在―――「プルミエール」を見るなり、動揺の色褪め上がらぬジョカリーヌ・・・
それに、その存在が元々何者かを知っていたアヱカの告白により、永らく疑問とされていた女皇の真実が暴かれたのでした。
元々の存在が―――過去にどんな経緯で女禍と対立をして、歴史を紡いできたのか・・・
そのことは、お世辞にも「美しい」と云えるようなものではなく、寧ろ「醜さ」のみが残るモノでした。
その結果、そんな穢れた者を浄化できたのは、激しく対立していた女禍であり、その姉のお陰でもあったのです。
しかしそこで―――アヱカの敷いた結界内に現れたのは、穢れを浄化する以前の「ヱニグマの分身」・・・それが「プルミエール」だったのです。
しかもこの存在は、「ヱニグマ」が、万が一の事態を想定して造っておいた、いわゆる処の「保険」・・・
けれど、女禍に敗れて存在を消滅させる際・・・〕
ヱ:ガラティア―――最後にもう一つだけお願いが・・・
わたくしがこうなることを想定して、造っておいたわたくし自身の「クローン」・・・アレの削除を――――
それだけが心残りなのです・・・それさえが終われば―――あとはわたくしのことを忘れて頂いても・・・
ガ:フ・・・ッ―――莫迦だねぇ・・・。
誰も、あんたのことなんか、忘れてやりはしないよ・・・