≪五節;翻弄≫
〔しかしその時は、以外にも早くに訪れてきてしまったのです。〕
魔:ほほう・・・中々どうして―――人間の中にも案外出来る奴がいるようだ。
マ:むっ―――なんだいなんだい! あたし達人間を莫迦にする奴は、赦しておけねぃぜいっ!
魔:フフフ―――これは失礼をした・・・。
我が名は、ワーライオンのチャリオット・・・貴殿の名を、お聞かせ願おうか。
マ:あたしは・・・マキ=キンメルってんだ―――よっく覚えときな!
〔彼女・・・マキの前に現れたのは、獣人族(ライカーン)の中でも、上位に属している「獅子男」なのでした。
そのことに、動物的直感が強かったマキは、自分の身に迫る危機を避止(ひし)と感じていたようではありましたが―――
その直感は、多かれ少なかれ、現実のモノとなってしまうのです。
攻撃性・俊敏性・残虐性―――そのどれをとっても、ヒューマンより優(まさ)れるところの多い「百獣の王」・・・。
その魔獣の攻撃に、人間の一少女でしかないマキは翻弄されていく象(かたち)となり・・・
皮が裂け―――血が飛び散り―――肉が破れる・・・
そこには、猛獣の前に立たされた人間の・・・誰しもが得られる処の結果としての姿だけがあり、
けれどそのことは、マキがいつも肌身離さずつけていたアクセサリーが、元の持ち主に緊急の信号を放っていることでもあったのです。
そしてこのアクセサリー・・・ブラッド・チャリスの元の持ち主である、エルムが来た時には―――・・・〕
エ:あっ―――・・・マキちゃん!!