≪三節;闘争の系譜≫
〔そうこうしている内に、「リベンジ」は行われており―――新たにヴァンパイアになった・・・までは良かったのですが、
ヴァンパイアも一応はヒューマンがベースになっており、闘争の仕方も以前とはあまり変わらない・・・だけに、またもや獅子のライカーンに翻弄されていくマキの姿が―――
一度攻撃をする度に、数倍の反撃を受けるマキ・・・
だから先ほどと同じように、身体中に痛々しい傷をいくつも造ってしまうのですが―――
以前とは徹底的に異なったこと・・・
それらの「傷」が―――見る見るうちに回復していく・・・つまり、ずば抜けた「復元能力」を身に付けていたのです。
その様子を、驚きの眼差しで見つめるユミエの姿が―――・・・〕
ユ:ど―――どうなってしまったんですか・・・あいつ・・・ねえ、エルム様!
〔しかし、エルムからの返事はありませんでした。
ただ腕を組み―――新たに自分の「娘」になり得た者の、「闘争」のあり方を見ているだけ・・・
その様相も、シャクラディアで目にした時のような、飄々としたものではなく・・・
寧ろ、エルムの「父」なる者―――エルムドア大公爵に、どことなく似通ってきていたのです。
そして徐(おもむろ)に・・・〕
エ:・・・どうしたんだい―――マキ、お前の実力とはそんなもんだったのかい・・・。
マ:いえいえ、これからってとこだよ―――エルムちゃん。
エ:―――私の事は、「公爵様」か「母」とお呼び。
マ:・・・ヤー・ムッター(はい、お母様)―――ヘルツォーク・エルム(エルム公爵様)。
獅:フン・・・しかし手応えのない―――復元能力を加えただけで、他は以前(まえ)とは変わらんではないか・・・。
だからこそ望む―――ヴァンパイアの真祖よ・・・次こそのお相手は貴殿だ!
エ:フ・フ―――ン・フフフ・・・それでこの私を挑発しているつもりなのかい。
だとしたら勘違いもいい処だ―――いいかいよくお聞き、この子はね真祖になってまだ間がないんだ、云わば産まれたての小鹿ちゃんみたいなものなんだよ。
そんなのに勝って嬉しいとは・・・お前の里も知れたもんだねぇ。
獅:フ・・・面白い―――ならばこれではどうだ?!
〔今までは対等の立場で口を利き合っていた者同士が―――いつの間にか上下関係・主従関係を結んでいた・・・。
しかし、それこそが―――「血の盟約」・・・ヴァンパイアに血を吸われた者の宿命(さだめ)・・・
それにしても見違えたのは、マキだけではなく―――悠然としているエルムもそう・・・
ユミエ自身が知るエルムは、どこか憎めなく―――ふざけている道化のような存在だったのに・・・
そこにいたのは、紛れもなく「娘」の闘争を見守る者にして―――その「嗜好者」・・・
本当は・・・この獅子男と闘り合いたくてうずうずしているのでは―――
そのことを敏感に察していたのか、獅子のライカーンは、目の前にいるマキには目もくれるではなく、悠然と佇むエルムを挑発し―――挙句に攻撃を仕掛けて行ったのです。〕