≪四節;一族≫
〔・・・が、しかし―――〕
――=夢想残光霞=――
獅:ぅぬおっ―――?!
誰:・・・公爵様、ご無事ですか―――
エ:サヤ―――手出しをするんじゃないよ。
あの子の闘争を見極めるんだ。
サ:(!)これは差し出がましい事を―――・・・
エ:だが、いい機会でもある・・・。
お前も姉貴分として、あの子にレクチャーしておやり。
サ:ええ、勿論ですとも―――我らが新たなる一族に、永遠(とわ)の祝福を・・・
〔彼の獣人の爪牙が、あと一歩まで迫る時・・・阻んだ血の太刀―――
その太刀こそは、ヴァンパイアの内(なか)でも、唯一武器を帯びて闘争を繰り広げる者・・・サヤなのでした。
それに彼女がここに来たと云うのも、エルムの身の危機を感じて―――ではなく・・・
新たに自分の一族に加わった者を祝福すべく、この場に馳せ参じていたのです。
そしてこの因縁の闘争も―――終焉が・・・〕
マ:うぅ〜ん・・・なんだかようやくこなれてきた感じがしますよ―――
今からそいつ・・・ブッ壊しちゃって構いません?w
エ:フフフ・・・どうやら豪(えら)く気に入ったようだ―――好きにおし・・・
獅:このオレ様を差し置いて、なんの相談事をしているのか判らないが―――
一つ勘違いをしているのではないかな・・・そこにいる奴は新しくヴァンパイアになったばかりで、未だ「呪」を仕込ませてはいない・・・
そこで、今の内に血肉を喰らえば、この身を乗っ取られる事も・・・ない。
マ:へヘッ―――ヘ・ヘ・ヘ・・・なんか云ってますよ・・・こいつ・・・
このあたしが―――お前みたいな奴に・・・簡単にやられるとでも思ったのかい!
〔産まれたてのヴァンパイアと、獅子男の闘争は・・・両者とも退かぬまま―――延々と繰り広げられていました・・・。
片や―――新しく「なった」とは云いながらも、優れた闘争性能・・・無限に近い持久性に耐久性をも兼ね備えてしまったヴァンパイアの真祖に、
片や―――「百獣王」ライオンの特性を持ち合わせる獣人(ライカーン)・・・
両者の実力は、ほぼ逼迫―――だから結果も「共倒れ」・・・と、云う事も考えられなくはなかったのですが・・・
実を云うと、この闘争は―――全くのイーブンではなかったのです。
なぜならば・・・この時頭上に上がっていたのは―――「満月」・・・
それも・・・鮮血のような、真紅(あか)い月が―――
けれど、それこそは「異空間の月」であり、あるヴァンパイアの真祖の魔力によって創り出された―――月・・・
それであるが故に・・・産まれたばかりのヴァンパイアも―――時間の経過と共に馴染んでいき・・・
終(つい)には、獅子のライカーンを斃してしまったのです。〕
マ:闘争、終了しました―――公爵様。
エ:まだぎこちない処があるようだけど・・・中々良く出来たよ、いい子だ。
マ:エへへ・・・初めてなんですけどね―――
エ:フ・・・では、後は私が片すとしよう。
サ:ちょいと待った―――それって普通にありませんよ・・・公爵様。
少しは私にも回してもらわないと―――
エ:おや、そうだったねぇ。
だったら―――・・・あの木を境に、あちらをお前に上げよう・・・。
サ:フフッ―――8:2・・・ですか、参っちゃうよな・・・でも、ま―――いいっか、ないよりはましですからねぇ。
〔纏めていた者を失い、散り散りとなる軍団を・・・まるで弄玩(もてあそ)ぶかのように戦場を跋扈する者達―――
その中でも、ヴァンパイアの公爵の実力は最たるもので、逃げ惑う者を追い抜くと・・・触れてもいないのに細かな傷が幾つも付き、そこから全身の血を抜かれる者が続出したり・・・
また―――それに負けじと、ヴァンパイアの子爵は、自らが血で創りだした血の刀剣で、あとの残りを掃討したのです。〕