≪五節;更なる一手≫

 

 

〔それに、ヱリヤにはまだもう一つの懸念がありました。

そう・・・弟ゾズマとの確執―――

自分と血を分けた肉親と相対峙する・・・あんな思いは一度きりでいいとは思いながらも、兵力を分散化してくれた事で、

弟との話し合いの場が持てるのではないか―――と、云う期待感も、あるにはあったようです。

 

そして、パライソ元帥であるタケルからは、マルドゥクと対戦する上で、大きく戦局を左右されると思われる「次なる一手」を用意しているとの声が・・・〕

 

 

タ:―――まあ確かに・・・この三地点で各々の戦局を優位に闘えれば、それに越したことはないとは思うのですが・・・

  ワシが思うに・・・それだけでは相手の戦意を挫くまでには至らない―――と、思うのです。

 

エ:ふぅん・・・じゃあ、タケさんはどうしようって云うのよさ―――

 

タ:そうですね・・・それではこうではどうでしょう―――

  更にもう一つ別働隊を設け・・・間道を使って―――この・・・ユグノーよりさらに後方に控える重要拠点「ダニューブ」を陥落(おと)すのです。

 

テ:そんな・・・無茶だ、第一そこまで動かせられる予備兵役なんて、マグレヴに残ってなどは・・・

 

タ:ここは必ずや陥落(おと)さなければなりません―――あなた方が無理だとおっしゃるのなら、ここは敢えてワシが赴きましょう。

 

 

〔確かに、婀娜那の戦略は的確にして見事なモノではありました。

・・・が、それでも決定的な打撃を相手には与えられないモノと思い、ここは多少無理を冒してでも強行軍に打って出る必要性を唱えたのです。

 

各戦線にて、両軍が勝利を得る為に血眼になっている間―――別働隊を使って昼夜を問わず行軍させ、

後方からの物資の補給や増援などの後続を断った後、敵軍を挟撃して討ち鎮める・・・

 

これは、下手をすれば多大な消耗戦にならないとも限らなかったのですが、敢えてこの一戦に集中させ、この機を持って片を付けてしまわないと、

この戦局は泥沼の一途を辿ることとなり、眼もあてられない様な状況に陥ってしまう事を、タケルは恐れていたのです。

 

するとそんなところに―――〕

 

 

婀:その別働隊―――妾も付いて参りましょう。

タ:いや―――婀娜那・・・その気持ちは嬉しいが、お前なくしては誰がカルカノールを獲ると云うのだ。

 

婀:それは―――っ・・・この国の将軍である・・・

タ:テツロー殿か・・・確かに彼は、ワシらからしてみればまだまだ未知数ではあるが、それに比べるとお前の事は知らぬ間柄ではない。

  それに・・・ならばどうだろう―――テツロー殿・・・

 

テ:ふん・・・いいだろう、これはもともとオレ達の戦でもあったのだ、何も他人のあんた達の力を借りてまで大事を成そうとは思わない。

  だが・・・こんな意地を通せるほど、この国の窮状が見えていないわけでもない・・・

  だから、協力しあって―――と、云うのならば、オレは賛成だ。

 

タ:・・・決まりですな―――では婀娜那、テツロー殿と共に、カルカノールを・・・頼むぞ。

 

 

〔寡勢をもって多勢を打ち破る―――この手法は、よくよくガルバディアでの統一戦にタケル達が用いたモノであり、必ずやその後の戦局に影響を及ぼしたモノでもありました。

 

それを・・・今回は、今まで作戦の立案のみだけを献じていたタケル自らが行う事になり、その事を危険に感じた婀娜那が加わろうとする場面もあったのでしたが、

結局の処は、婀娜那はこの国の将軍であるテツローと共に、カルカノール制圧に心血を注がなくてはならなくなるのです。

 

それに―――タケルにはある思惑もありました・・・

 

あの計画の―――時間的余裕・・・

 

それが丁度、マグレヴと開戦になって―――各戦線において、激戦が繰り広げられている頃合い・・・

別働部隊が―――間道を通って、ダニューブを強襲する頃合い・・・

 

それに併せて、パライソにいる者達と調整を行ってきた・・・

 

「戦」とは―――負ける為にするモノではない、勝つ為にするモノである。

少し乱暴な表現かもしれませんが・・・勝つ為ならば、多少なりとも強引な手を打たなければならない事を、カルマとの統一戦で学んだものだったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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