<第二章;顕在化してくる不徳なる影>

 

≪一節;概(おおむ)ねの顛末≫

 

 

〔晴れやかなる早朝―――三々五々集まりだす諸官・・・

その場所は、最早云うまでもなく、パライソの諸百官が政務などの論争を交わす場所―――

 

最上座には女皇であるアヱカを頂き、両脇を大将軍である婀陀那と、同じく統北将軍・録尚書事であるイセリアが固め―――

 

左方の上座に近い座から、軍務の上級将校である騎将軍であるヱリヤに車騎将軍であるエルム、左将軍のキリエに右将軍のサヤ―――という風に連なり、

右方でも、政務の上級官である尚書令のタケルに、同じく尚書令であるハミルトン・・・

 

―――というように、軍務及び政務共に、他の追随を赦さない布陣だったのです。

 

 

そして―――粛々たる雰囲気の最中にも、御前会議は執り行われ―――・・・〕

 

 

イ:それでは―――これより御前会議を始めたいと思います。

  まづ、各々の献策から伺いましょう―――

 

タ:はっ―――それでは・・・以前より民たちからも申し出られていますように、国の蔵に保管されている食物の一般解放などを試みられてはいかが―――かと・・・

  また、カ・ルマとの一時停戦に伴い、破損された河川の堤防などの修理も・・・

 

 

〔議事の進行を担うのは、女皇の両脇を固める片翼の一つ―――統北将軍・録尚書事イセリア・・・

 

元々彼女はパライソの礎ともなった旧フ国の尚書令であったわけなのですが、最後のフ国王・ホウ=ボレアス=アレキサンダーが、

アヱカに王位を禅譲した事により、多くの官がパライソ国に異動・・・イセリアはそのうちの一人でもあったわけなのです。

 

そのことに、当時の国民の間では『忘恩の徒』―――などという心無い言葉が飛び交いもしたのですが、

継王・ホウの前代である愁王・ヒョウの時代に、暴政によって荒れてしまった事もあってか、

さすがに傾きかけた国政を引き継ぐることを善しとしなかったアヱカは、禅譲を一つの契機としてパライソ国を建国、

そして、自らを「古(いにし)えの皇」に准(なぞら)えるかのごとく「女皇」としたのです。

 

その―――彼女の下には多くの士が集(つど)いました・・・

旧フ国録尚書事であった婀陀那然り―――尚書令であったイセリア然り―――・・・

 

これを見ての通り、そんな声など、実は少数派の意見に過ぎなかったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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