≪二節;熱い視線の主≫

 

 

〔―――ともあれ、今はパライソの官僚である者達は、互いの政務論争を交わしあい、この国の力を宛(さなが)らにして垣間見ることができたのです。

 

そんな最中(さなか)―――婀陀那は或る特異点に気付き始めていました・・・

 

それは、タケルが弁舌をする最中、彼に熱い視線を送る一つの存在・・・・

それこそは、女皇であるアヱカである―――と、云う事を・・・

 

そして、そんな視線に気付いているのか、そうではないのか・・・

自分の弁舌を終えると、最上座には決して目をやろうとはしない、自分の夫―――・・・

 

婀陀那は、気付いていたのです―――

自分とタケルが婚姻を結ぶよりも前に―――この主従は、主従という間柄以上のモノを創り上げていた事など・・・

 

それを―――或るとき・・・

兇悪大国カルマに拮抗せんがために、旧フ国の東西両隣にあったヴェルノアとラージャとの関係を、

今まで以上に密にしなければいけないという観点から、婀陀那がタケルに申し出た事・・・

 

けれど―――それを公では『政略婚』と呼び、余り幸せな結果となれるものではなかったのですが・・・

 

実は、ヴェルノアの公主である婀陀那が、一方的にタケルに惚れ込んでいたという噂も少なからずにあったのです。

 

ですが―――それが本当にそうだったのならば・・・これはそれの名を騙った『略奪』―――

 

 

この、不祥極まりない事をそうだと感じてしまったのは、

婀陀那がそのことをアヱカの前で話したとき―――あの真紅の眸の奥が揺れたかと思った次の瞬間・・・

円らな瞳から零れ落ちた、まるで真珠のような大粒の涙が、一滴(ひとしずく)、二滴(ふたしずく)―――・・・

 

自分は今・・・この女性の一番大事なモノを奪ってしまった―――・・・

そう思ってしまったからなのか、自分の口からはお為ごかしの様な『政略のため』の一言―――・・・

そのことを知ると、溢れ出る涕を抑えるようにしながら、祝福のお言葉を下されたお方・・・

言の葉というものは凶器―――諸刃の刃の如きだ゙と、婀陀那はそのときに思ったものなのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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