≪二節;ジブの戦い≫
〔そして―――戦端は拓(ひら)かれました・・・
なんの前触れもなく―――・・・
指揮官の号令によって、次々とジブに設けられたマグレヴの陣に傾(なだ)れ込んでくる、マルドゥクの兵士達・・・
ですが―――彼らを待ち受けていたのは・・・たった二人・・・
「ハイランダー」の、「ファイアドレイク」と「デスバハムート」・・・
この二人しかいなかったのです。〕
敵:な―――なんだあいつらは??
敵:オレ達を迎え撃つのに、たった二人・・・だとぉ〜?!
敵:にゃろう―――なめやがって!!
ヱ:―――お前達に告ぐ!! 生命(いのち)の惜しい者は、すぐにこの場より去れ!! さもなくば―――・・・
敵:うっぐぐぐ・・・な―――なんて強力な気を発する奴だ・・・
敵:ああ・・・まさに本気の殺意―――全くもってあの方と同じだ・・・
敵:〜だが! オレ達だってマルドゥクの兵士―――奴ら二人に怖気付いたとあっては、国のモンに笑モンにされちまわぁ〜〜!
キ:―――莫迦者共が・・・折角、驃騎将軍様がお慈悲を給わってやったと云うのに・・・
―――驃騎将軍様・・・
ヱ:待て、キリエ―――・・・
敵:お―――おお、ゾズマ様!
ゾ:フ・・・スィストラーシャは、いつもお優しい・・・
だが―――時と場合によっては、その優しさは仇となる・・・。
その最初の犠牲者が、私であると云う事を忘れたか!
〔先程まで、陣内に充満していたマグレヴの兵士達は影を潜め、代わりにその場にいたのは、他国の将校が二人・・・いるだけなのでした。
そのことを不審に感じていたマルドゥクの兵士が口上を述べた時―――ヱリヤは、無駄に命を落としたくはなかったら、この場からすぐに立ち去るよう敵兵に呼びかけました。
そう・・・「敵兵」に―――
「戦」とは―――矜持を違(たが)わせる者同士の闘争であり、また軍部の頂点にある将校から下は兵卒まで、武力(ぶりき)を総合的に競わせる場でもあったのです。
しかし―――そのことを・・・ヱリヤは今回に限り違うモノだとしていました。
(・・・とは云っても、国家同士の覇権争いには関与しているのですが・・・)
彼女にしてみれば―――「血縁同士」・・・もう少し、平たく判り易く云えば、「姉弟喧嘩」に等しかった・・・
そこには「国家間の」―――と、云ったような「大義」はなく、どちらかと云えば「私怨」・・・「私闘」にも等しいとも云えたのです。
それに、ゾズマの方にも言い分はありました。
一族の内でも、母であるスターシア=ラゼッタ=アトーカシャに次ぐ実力を保持する自分の姉・・・
けれど自分の姉は、戦闘から離れると普段は―――優しかった・・・
優しくて強い―――自分の姉・・・
美しく―――誰よりも愛する・・・自分の姉・・・
幼い頃、それは羨望であり、何よりも自分の目標でもあったのに―――・・・
それが・・・一体どこから狂ってしまったのだろうか・・・
いつしかゾズマは、姉であるヱリヤを愛した以上に憎むようになり、過去に自分に対してなされた情けや優しさなどが、不当なようなものに思えてきた・・・
彼の胸の奥深くに巣食っていたのは、「憎悪」という「負」の塊でもあったのです。〕