<第二十一章;未来(あす)の勝利の為に(中)>

 

≪一節;驕れる者久しからず≫

 

ゾ:うぐ・・・ぐわあぁぁ〜〜―――!! こ・・・この私が―――お前達如きに屈するとはぁぁ・・・

 

キ:デイアーデイァシャ・・・

ヱ:ゾズマ・・・思えばあいつも哀れな者だ。

  己を自信過剰に捉えられていなかったら・・・私が罪過の焔に身を焦がしていたのかもしれない―――

  ただ、私よりかあいつの方が―――・・・

 

キ:ママーシャ・・・

 

 

〔遥かな過去に生き別れた弟であり叔父は、こうして存在の終(つい)を迎えました。

 

彼も、もう少し自分と云うものを知ってさえいれば、長生き出来ていたものを・・・

そう云った残念な思いは、一族である彼女達の胸の内に、どれほどかあった事でしょう。

 

そうした傲慢な性格が、彼―――ゾズマ=ルクスゥ=アグリシャスの早逝を招いてしまっていた事は、否めなかった事なのでしょうか。

 

 

こうして―――ジブでの戦いは、大将同士の一騎打ちにて早期決着が行われたモノの・・・

ならば他方面の戦線は―――?

 

その一つである「ミレット」では、もう一つの・・・戦闘を得意としている種族―――ヴァンパイアの一族達が、戦端が拓かれるのを「今か・・・」と、待ち受けていたのです。〕

 

 

サ:公爵様・・・この気―――

エ:・・・あの人が―――どうやら自分の血に連なる者の一人を、滅してしまったようだねぇ・・・。

  ご覧よ―――感じるだろう・・・あの人の、こんなにも哀しい気を・・・

マ:エルムちゃん―――・・・

 

エ:あの人は・・・さ―――だからなのさ。

  厭な血の流れる「戦」を嫌うのは。

 

 

〔「戦」と云うモノほど、不条理なモノはない・・・

昨日、愛し合っていた者同士が、些細な意見の食い違いから争い合ってしまう―――

その事が大袈裟になれば、国家間同士の争う「戦争」にも成り得る・・・

 

そこでは、親・兄弟・恋人・夫婦と云えども、「敵」同士になってしまう事は、そう珍しくもない事でした。

 

ただ・・・最悪なのは、そうした者達が、同じ戦場にて遭遇してしまった時―――

以前までは、あんなにも愛し合っていたと云うのに・・・

今では憎しみ、殺し合う―――・・・

 

そんな者達の血を、ヴァンパイアであるエルムは好みませんでした。

 

怒り・妬み・憎悪・・・等と云ったような「負の感情」は、それだけ味を不味く感じさせ―――更には咽喉越しも不快感にさせたモノだった・・・

 

だからエルムは、ここ最近では気の合った者からしか血を摂っていなかったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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