≪二節;アンニュイな闘争≫
〔しかし今は戦場―――それに、救援要請の出ている国、達(たっ)ての依頼と云う事もあり、そんな悠長な事を云ってもいられないのです。
それに・・・今回自分達が請け負った戦場は、晴れた日でも泥濘(ぬかるみ)が多く、油断をしていれば足を取られて行動が制限されてしまう・・・そんな地形なのでした。
そうした不利な地形を―――彼女達はどうやって克服したのか・・・
そこはやはり、得意としている闘技(アーツ)を駆使して・・・なのでしょうか。〕
ト:≫公爵様―――敵、東35°より侵入致す模様・・・≪
エ:そうかい―――だったら、サヤにマダラ・・・征(い)って遊んでおやり。
サ:云われるまでも・・・征(い)くよっ―――マダラ!
〔素早くて鼻の利く―――大型の魔獣・・・トウテツ。
その魔獣からの報告により、一族の内(なか)でも自分の次に戦闘経験が豊富な「子爵」に、この度新しく自分達一族に加わった「男爵」へのレクチャーも兼ねた命令を下す「公爵」。
今回の会戦は、彼(か)の一族達にしてみれば絶好の機会でもありました。
なぜなら・・・「実践」と云うのは生きた教材―――机に齧(かじ)りつかせて、ノートを取るだのと云うのは彼らの意にはそぐわない・・・
実践こそが総てであり、だからこそ不死身の身体を与えられている・・・
彼らにしてみれば―――常人が羨望としている「不死」の意味は、実はそれほどの意味しか持たなかったのです。
それに―――そうした一族の長の意を汲んだ「子爵」サヤも、従者(サーヴァント)であるトウテツのマダラの背に飛び乗ると、「ビーストライダー」として戦場を疾駆したのです。
すると―――途端に条件が異なってきました。
それと云うのも、トウテツなる魔獣にはいかなる地形も左右されない・・・
だから、敵がもたついている間にも、素早く彼らの隊列に割って入り―――生命の簒奪を欲しい儘としてきたのです。
ただ―――この一族が持っている矜持からすれば、「弱者を甚振(いたぶ)る」と云うのは不本意であり、そうした不満は帰陣してすぐに口から出てきていたのです。〕
サ:へえ〜え・・・ただいま―――帰りやんした〜〜と・・・
マ:あっ、サヤ姐さん、お帰んなさ〜い♪
サ:・・・あぁ〜あ―――なぁんかつまんね・・・
いいんですかねえ―――公爵様・・・こんなんで。
エ:いいんだよ―――こんなんで・・・
今回、私達の出る幕・・・って、最悪ないかもね―――
サ:ぇえ〜? そんなんないっすよ―――なにもさぁ・・・こちとら遊びで来てるわけじゃないんですから・・・
マ:ほえ? そうだったのにゃ?
ト:(虫取り網に籠・・・)どうやら男爵様は、遊ぶ気が満々だったみたいですね―――
サ:コラコラ・・・ふざけてんじゃねえよ―――
〔どうもここ最近は納得のいかない闘争ばかり―――
その事を感じていたからなのか、「子爵」サヤも途中で戦闘を切り上げてしまい、けれども敵の追っ手もかからなかったところをみると、
戦場でのサヤの有り様に恐れをなしてしまっていたことが伺われたのです。
しかも―――陣に戻ってみれば、こうした自分の不満を聞いてもらえるどころか・・・
「公爵」エルムは爪のお手入れにご執心―――
「男爵」マキは両手に遊び道具を持って、今にも外に駈け出しそう・・・
そこでなんと、真面目に取り合っていたのは意外にも自分一人だけだった事に、「子爵」サヤは呆れ果てていたのです。〕