≪三節;ブラフ≫
〔・・・と―――そうかと思いきや・・・〕
エ:フ・・・ッ―――フ・フ・フ・・・
どうやら―――無理をしてお芝居するのは、限界があったようか・・・ねぇ。
サ:―――はい?? あの・・・公爵様―――あんた・・・今、一体何を・・・
エ:勘違いをしてるんじゃないよ―――私は・・・元のまま・・・さ。
そう―――「昔」の・・・ねぇ♪
サ:ちっ・・・ちょっと―――あんた・・・まさか―――あの方を・・・?!
〔公爵より、不適切とも取られ兼ねない言葉が発せられた―――
そのことを、「一体いつから」・・・と、諌めるかのように訊ねてきた子爵をあしらうかのように、またも公爵は不適切なモノの云い方をしたものでした。
しかも、その言葉は殊の外重要でした・・・
現在の公爵・エルムは「元のまま」・・・それも「昔」の―――
「昔」のエルムがどんな人物だったのかは、ある合意の下(もと)「吸血」を行い―――新たに一族の一人に迎え入れられた、この国の民のお話しを参照してもらえると判るかと思うのですが・・・
今現在、ヴァンパイアと云う種族を統率しているのは、通称を「公爵」と呼ばれているエルム―――
それに、これまでのお話しの内(なか)では、エルムの過去―――と、云うより、種族全体のモラルが低下した過去にあった事件の事を鑑(かんが)み、
この種族の行く末を案じたある人物からの「血の制約」を受け、元の性格を潜ませた―――か・・・の、様に思えたのですが・・・
もし今のエルムの言葉が本当だとしたならば、それはそれで大問題になってしまう事を諌めようとしたサヤを―――・・・〕
サ:―――・・・・・
エ:サヤ―――お前は、私と違って頭のいい娘(こ)だ・・・
だから・・・お前をそこまで育ててやった私の云う事が判る・・・だろう。
サ:・・・ヤ・ポール―――ヤ・ポール・ヘルツォーク(はい、判っています、公爵様)・・・
何より私は、あなた様より大恩ある身―――逆らう事など赦されませんから・・・
エ:フ・フ―――よく出来た・・・お悧巧さんだよ、サヤ。
その御褒美に―――先陣を切らせてあげよう・・・
サ:ありがたき幸せ―――
エ:さあ―――併呑(のみ)こもうじゃないか・・・この私達の前にはだかる「敵」を!!
サヤ―――マダラ―――マキ―――私達の前に存在する者は、総て「敵」・・・
「見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)」―――心ゆくまで愉しもうじゃないか・・・闘争と云うモノを!!
〔公爵の―――真紅をした瞳に魅入られると、万人の誰しもが抗えませんでした。
そしてそれは、一族の一人であるサヤもまた対象としては例外ではなく・・・
自分達の主に逆らう事の非を解かんとしていた時、公爵の真紅の瞳に魅入られてしまった―――
そしてそこからは、まるで従順な態度・・・
一族の一人である「子爵」でさえ抗える事が出来ないのに、常人である者達がどうして抗えきれるだろうか―――
彼女がそう思ってしまえば、譬え「死」すら厭(いと)わなくなる・・・
そうなれば、自らが望んで―――項(うなじ)を差し出したくなる・・・
そう―――「昔」のように・・・
大公爵のようには露骨ではない―――けれど、こうした公爵のなしようには、苦情が殺到するのも無理らしからぬ所があったようで、
時の「皇」も、見て見ぬふりは出来なくなり、自らの血を用いて「八苦」の封を施した・・・
そのときから、公爵は生の血が苦手となり、喩え吸ったとしても身体が血を拒む体質に変えられてしまった・・・
しかしある時を境にして、この封印が解けてしまい―――また「昔」の自分に戻った・・・
生の血を・・・闘争をこよなく愛する―――「公爵」に・・・
そしてまた、この下命(オーダー)も復活をした・・・
「見敵必殺(サーチ・アンド・デストロイ)」―――
この下命(オーダー)を聞くのと同時に、嬉々とした表情になってしまうのは、そのこと自体が、自分がヴァンパイアであると云う事を、証明してみせていたモノだったのです。〕