<第二十二章;未来(あす)の勝利の為に(後)>
≪一節;互いの主張≫
〔マグレヴがあるランド・マーヴルの各地域―――「ジブ」や「ミレット」では、敵対するマルドゥクの軍と国家存亡を賭けての決戦が行われていました。
その中でも、最大の激戦区と成り得たのは、「カルカノール」―――・・・
早々に、この地にある廃墟に近い砦を掌握し、そこに本陣を張った婀娜那とテツロー。
しかし、その当初から他所者である婀娜那達を快く思っていなかったテツローにより、まとまる話も中々まとまらなかったようです。〕
テ:何を云っている―――もうすでに「ジブ」や「ミレット」では戦端が拓かれていると云うのだぞ。
それを・・・どうしてオレ達だけが堅く守らなければならないのだ!
婀:よろしいですかなテツロー殿、よくお聞きなされ・・・
確かに、今回の戦における両翼であるエルム殿やヱリヤ殿におかれては、個々の種族による攻勢が展開されておるであろう・・・。
ですが―――人間である妾たちの軍は、やはり相手側のそれと比べると遙かに少ない・・・
寡兵をして多勢に臨むのは、やはりそれなりの準備をして事に臨むべきであろう―――と、こう申しておるのですよ。
テ:ええい・・・そんな精神論は、これまでにも幾度となく実行してきた―――
だが、奴らはそれを上回る人海戦術にて我々を圧倒してきたのだ、それを・・・多寡だかそなたらの一軍を加えただけで、空いた穴の埋め合わせにすらならない・・・
ならば―――ここはいっそ、玉砕覚悟で・・・
婀:やれやれ―――総大将・指揮官のお主がそれでは、この国の為に命を捧げた者が哀れでならぬ。
それに・・・まあ―――尤(もっと)も、妾たちは、みすみすこの国の礎になりに来たのではないのだから・・・な。
〔婀娜那は―――これまでになく落ち着き払っていました。
なぜ―――・・・?
彼女にしてみれば、マグレヴは初めて・・・未開の地であると云うのに―――
この落ち着きぶりからくる「自信」のようなモノは、果たしてどこから来るのでしょうか。
それとはまた対照的だったのは、マグレヴの総大将兼指揮官のテツロー・・・
彼はこれまで―――パライソと云う国が援助に来てくれるまで、ありとあらゆる戦術を・・・戦法を・・・戦略を実行してきました。
けれどそれらは総て徒労―――
その結果は、現在のマグレヴの状況を見ても明らかなことだったのです。
とは云え・・・彼一人のみを責めるのは、少々酷と云うもの。
自分達の敵対する勢力が、実は人間ではない兵士で軍隊を編成していた―――
けれどその状況は、パライソとて同じこと・・・
彼(か)の国も、「カルマ」という敵対国との覇権争いでは、魔物兵と数限りなく闘ってきた経験があった・・・
しかし将兵皆―――そこで悲観的にはならずに、一丸となって敵を切り崩し、やがては勝ち残る事が出来ていたのです。〕