<第二十四章;真の決着>
≪一節;合間のひと時≫
〔マグレヴ・パライソ連合軍と、マルドゥク軍が展開させた決戦は、圧倒的戦力・戦略差をして連合軍側に凱歌が上がりました。
この決戦の行方により、マグレヴは旧領並びに国力を回復、このランド・マーヴルの事実上の覇者として君臨するはず・・・
―――と、誰しもが思っていました。
しかし、「ランド・マーヴル統一戦」の内(なか)で一番の激戦だったのは、両軍相乱れた「カルカノール」での闘いではなく・・・
実は―――今日(こんにち)、マグレヴの仮王宮を設立している「アーク・ゼネキス」だったのです。
それはともかく、戦場から遠く離れたこの地で、戦士達の安否を気遣っているマグレヴの新女王・・・ルリがいる宮殿に―――
そんな不穏な影は容(かたち)すら見せていなかった・・・
そこでは―――いつも通り・・・戦時中のそれではない、平和な時の穏やかなひと時を演出していたのです。〕
ジ:え〜っと・・・ここを―――こうして―――・・・
ル:すみません・・・ジョカリーヌ様、パライソの次期当主であるあなたまで、私の国の政務の手伝いをさせてしまうとは・・・
ジ:いえ、いいんですよ・・・若い頃の苦労は買ってでもせよ―――と、いうくらいだしね・・・。
それに・・・ここも変わらない・・・私の姉が云っていたように―――・・・
「文明と云うのは、利便性があるけれども、そればかりに頼り過ぎては、自然に干渉する嫌いがある。」
お陰で・・・私も目が覚めたよ、私達がいくらこの惑星(ほし)を愛した処で、この惑星(ほし)は私達を愛してはくれない・・・
私達が万能の生き物で、何もかも自分の思い通りに出来る―――そう云った間違った理解をして、奢り昂ぶっている事をこの惑星(ほし)は知っているんだ・・・
だから、私達は常に試されているのさ―――本当は何もできないくせに・・・試練を与えるから耐えてみろ・・・ってね。
ル:は・・・あははは―――・・・
ジ:・・・あっ? あ・・・ああ―――ちょっと難しい話だったね。
けれど気になんてする事はないよ・・・今はそれぞれの均衡が保たれているから、別に不便は感じないはずだ。
それに―――ここからの眺めも変わらない・・・シャクラディアから、いつも眺めているそれと・・・ね。
〔パライソ国女皇の命(めい)により、先んじてマグレヴ入りをしていた皇女は、マグレヴの新女王となったルリの手伝いをしていました。
長い間・・・当主不在で、内外ともに荒れ果てたマグレヴ―――それに今回は、いよいよ敵国も本腰を入れてきたと見え、
ルリ達が戻る丁度三週間前に、当時王宮があったヘロイカを強襲―――ルリの父母であったマグレヴの王と王妃・・・並びにほぼ大半の官僚の殺害にいたり、
現在ではヘロイカより奥まったアーク・ゼネキスにて大勢の立て直しを図っていたのです。
そんな中―――窮地に立たされている母国を救う為にと、ルリを筆頭とするメンバーが「死の山脈」と呼ばれるヴァーナム山脈を越え、
そこで新たに関係を築き上げてきた大国―――パライソの協力を取り付け、起死回生を図ろうとするのです。〕